骨Gla蛋白 (Bone Gla-protein: BGP) は骨芽細胞においてビタミンKに依存して産生される. 閉経後女性や透析導入前の慢性腎不全患者において活性型ビタミンD
3の経口投与により血清BGPが増加することが知られており, このことは活性型ビタミンD
3による骨芽細胞でのBGP産生の増加を反映していると考えられている. 今回, 我々は高齢男性と若年男性に1α (OH)D
3を投与し, 両群での投与後の血清BGPの変動の差について比較検討した. 高度な腎, 肝機能障害およびカルシウム代謝の異常のない, 高齢者群 (年齢75.0±3.4歳) 男性10名, 若年者群 (29.8±1.7歳) 男性8名に1α (OH)D
32μgを毎日経口投与した. 投与前, 投与開始24時間後, 1週間後, 2週間後, 3週間後に血清BGPおよび1,25(OH)
2Dを両群で, 副甲状腺ホルモン (m-PTH), アルカリフォスファターゼ (ALP), カルシウム (Ca), リンを高齢者群で測定した. 1α (OH)D
3投与前の血清BGPは, 高齢者群4.63±1.8ng/m
l, 若年者群4.33±0.92ng/m
lと差を認めなかった. 血清1,25 (OH)
2Dは両群ともに投与後24時間で上昇傾向を認めた. 高齢者群においては投与後一週間に血清BGPが11.5±3.0ng/m
lと投与前の約2.5倍に有意に上昇した. この血清BGPの上昇は投与開始後3週間まで持続した. 一方, 若年者群ではBGPの変化は認めなかった. 高齢者群の血清m-PTHは, 投与前は544±257pg/m
lと正常上限にあり1α (OH)D
3投与開始後, 低下傾向を認めた. 血清ALPについても高齢者群では投与開始後, 低下傾向を認めた. 血清Caは高齢者群で上昇傾向を認めたが, 正常範囲内の変化であった. 高齢者ではビタミンD欠乏が存在し, 骨芽細胞機能は短期の活性型ビタミンD
3の投与により亢進する.
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