抄録
1997年2月に東京都老人医療センターにおいて, 全入院患者を対象として Barthel Index (BAI) を用いて行った基本的日常生活動作 (ADL) についての断面調査の検討結果を報告する.
対象は672名, 年齢77.2歳 (女性382名, 77.84歳. 男性290名, 76.39歳) であった. 疾患は脳神経 (N), 心循環器 (C), 悪性腫瘍 (M), 骨運動器 (B), 呼吸器 (P), 痴呆 (D) およびその他 (O) に分類した. BAIは看護観察度 (疾患の重症度を反映), コミュニケーション, 疾患区分, 年齢と有意の関係があった. 脳神経疾患, 痴呆はADLのすべての項目で他疾患に比べ有意に低下した. 骨運動器疾患は移動, 階段昇降, 入浴で, 慢性呼吸器疾患は階段, 入浴で低下し, それぞれ脳神経疾患, 痴呆と差が殆どなくなった. 慢性呼吸器疾患のADL低下は, 特に高齢になると顕著になった.
ADLを構成する項目の内最も早く侵されるのが入浴と階段昇降であり, 起居はBAIとほぼ直線関係を保って低下した. 食事の介助が必要となる時には大部分のADLで自立が失われていた.
QOLを重要視する医療においては, ADLの適正な評価が大切であり, 老年患者を対象とする診療に当たってはCGAの導入を考慮することが必要である.