日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
院内突然死における危険因子の検討
塚本 浩大島 康雄矢永 尚士高木 維彦
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1998 年 35 巻 11 号 p. 825-829

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抄録

わが国では年間5万人以上が突然死していると推測され, 近年注目を浴びているが, このうち高齢者医療における院内突然死の予知, 予防は重要な問題である. 今回我々は院内発生した突然死の危険因子の解析を試みた.
1996年の当院における死亡例209例を突然死群と非突然死群にわけ, 死亡1カ月前の理学所見, 検査成績及び治療内容を比較した. 院内突然死例は入院14日目以降の病状安定後に急変し, 24時間以内に死亡した症例と定義した.
1996年当院死亡例の内訳は男103例, 女106例, 平均年齢76.7歳であった. 院内突然死は16例 (7.7%) あり, 死因は心臓死が9例 (うっ血性心不全急性増悪5例, 急性心不全3例, 急性心筋梗塞1例), 非心臓死が7例 (急性呼吸不全2例, 慢性呼吸不全急性増悪2例, 横隔膜破裂1例, 腹部大動脈瘤破裂1例, 脳梗塞1例) であった. 突然死群は非突然死群に比べ, 平均年齢が高く, ジギタリス製剤が高頻度に使用されていた. 検査成績では突然死群は非突然死群に比しヘモグロビン, ヘマトクリットが高く, BUNは低値を示し, 心胸比は拡大していた. 心電図所見では突然死群では非突然死群に比し, 高頻度にST異常およびT波の異常を認めた. Brugada 症候群, QT延長症候群は認められなかった.
以上より, 入院中の高齢者で心不全があり, 心電図にて心筋虚血を示唆する所見を認めるものは突然死の発生に十分注意する必要があると思われた.

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