日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
生体に対するAGEの作用
永井 竜児堀内 正公
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1998 年 35 巻 4 号 p. 258-264

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抄録

AGEは加齢に伴って生体蛋白に蓄積し, 又, 糖尿病合併症, 粥状動脈硬化症, アルツハイマー病など, 老化が促進した病態で蓄積が増加することが明らかになった. 一方, AGE蛋白は, 種々の細胞の膜表面に存在する受容体 (AGE受容体) に作用して, 様々な細胞現象を惹起する. 例えば, AGE蛋白は in vitro で網膜血管内皮細胞と反応し, 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) を産生し, 血管新生を促進することから, 現在, AGEは糖尿病性増殖網膜症の発症因子の一つと考えられている. 従って, 生体の病変局所に蓄積 (生成) したAGE構造体は, 単なる蓄積物ではなく, AGE受容体を介してマクロファージや血管内皮細胞と反応し, 糖尿病性の血管合併症 (microangiopathy 及び macroangiopathy) の増悪因子として作用している可能性がある. 生体におけるAGEの意義に関する基礎研究から, AGE生成の阻害剤, 並びにAGEによって誘発される種々の細胞現象に対する抑制剤を開発し, 今後, 増々増加すると予想される加齢を基盤とする慢性疾患の予防・治療に関して基礎的な情報を提供できるものと期待される.

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