日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
アルツハイマー病における神経細胞死機構
善岡 克次
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1998 年 35 巻 4 号 p. 265-267

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抄録

最近のいくつかの研究から, アルツハイマー病における痴呆の直接的原因となる選択的神経細胞死は, 細胞内情報伝達分子JNK3によって仲介されていると考えられる. 本研究では, JNK3と相互作用する蛋白質因子の同定およびその解析を試みた. 酵母 two-hybrid 法により, 新規JNK3結合蛋白 (BP#2と命名) のcDNAクローニングに成功した. BP#2は, 脊椎動物MAPキナーゼの中ではJNK3と特異的に結合し, さらにJNK活性化キナーゼSEK1との結合能も有することから, JNK3情報伝達系におけるスキャフォールド蛋白として機能していると考えられる. また, 繊維芽細胞内でBP#2を強制的に過剰発現させることによりJNK3の活性化が抑制されることを見出した. 神経細胞においても同様の現象が認められるならば, BP#2の過剰発現によりアルツハイマー病における神経細胞死を特異的に阻害することが可能となるかもしれない.

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