日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
慢性関節リウマチと橋本病に合併した後期高齢者の slowly progressive IDDM
吉田 英史井上 達秀袴田 康弘為清 博道榎本 哲也越村 修佐古 伊康
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1998 年 35 巻 7 号 p. 571-576

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抄録

症例は79歳女性. 橋本病と慢性関節リウマチ (以下RAと略す) の既往がある. 78歳時に初めて糖尿病を指摘され, グリベンクラミドとボグリボースで治療を受け, いったん良好な血糖コントロールとなったが, 16カ月後に血糖が再上昇し始めた. 抗 glutamic acid decarboxylase 抗体 (以下抗GAD抗体と略す) は16,400U/mlと強陽性. 抗ランゲルハンス島抗体, 抗インスリン抗体は陰性. 1日尿中CRPは22.5μgと低下しており, グルカゴン負荷試験ではインスリンは無反応であることなどから, slowly progressive IDDM (以下SPIDDMと略す) と診断した. 人工膵島で測定した糖取込率は9.5mg/kg/min. でインスリン感受性は良好. 1日20単位のインスリン治療で血糖コントロールは良好となった.
橋本病はT4補充療法中で, 抗サイログロブリン抗体 (以下抗TG抗体と略す) 46.9U/ml, 抗サイロイドペルオキシダーゼ抗体 (以下抗TPO抗体と略す) 81.5U/mlと自己抗体は高値. RAは, リウマチ因子127.7IU/L, 抗核抗体80倍, 抗DNA抗体80倍. HLA typing では, DR9, A24, B51などを認めた. 文献では本邦における高齢者のSPIDDMの報告例はこれまでに5例あり, うち2例に甲状腺疾患の合併, ほか1例にRAの合併がみられるが, 甲状腺疾患とRAの合併例はなく, また後期高齢者での発症例は初めてである. 今後高齢者でも自己免疫疾患を合併する糖尿病については, SPIDDMの可能性について考慮すべきである.

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