日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢者リハビリテーションの最近の進歩
江藤 文夫
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1999 年 36 巻 3 号 p. 153-161

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抄録
高齢者のリハビリテーションの目的は, 個人にとって病前の機能や生活状態を取り戻すことであり, 或は生物学的および環境的制約の中で機能的自立を最大化し維持することである. そのためには医師, 看護婦, 理学療法士, 作業療法士, ソーシャルワーカーなど多職種によりチーム・アプローチを必要とする.
加齢とともに障害 (disability) を有する人口比は指数関数的に増大し, その原因となる主要疾患としては脳卒中, アルツハイマー病, パーキンソン病, 骨関節炎, 大腿骨頸部骨折があげられる. リハビリテーションの治療対応を計画する第一段階は障害の評価であり, 機能形態障害, 能力障害, 社会的不利を的確に同定することが求められる. 障害の構造は保健医療サービスにおける社会生活モデルとしてとらえられ, 総合機能評価法が開発されてきた. 評価の領域には身体機能, 精神機能, 社会的状況, QOLなどのアセスメントが含まれる. 生活活動を制限することになる能力障害の評価に関するADL (日常生活活動・動作) は疾病の重症度評価にも利用されてきたものであり, 老年科医には必須の知識である.
高齢患者へのリハビリテーションの取組としては, 機能低下の予防と, 加齢, 疾患, 外傷などによる合併症の予防と管理が含まれる. 急性期管理の臥床安静がもたらす多発性障害は廃用症候群として急性期からのリハビリテーションにより予防管理され, 社会復帰後の慢性的体力低下や機能低下に対しては老年医学的デイケアなど社会資源の充実で対応される. 脳卒中や大腿骨頸部骨折だけでなく急性疾患も含めた高齢患者一般において多職種チームによる取組が, 在院日数を短縮し, 機能予後を改善させる効果を有することが報告されている.
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