日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
要介護老年者の医学的総合機能評価
レーダーチャート方式採用と解析の試み
峯廻 攻守加藤 隆正
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1999 年 36 巻 3 号 p. 206-212

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抄録

要介護老年者の医学的総合機能評価とその結果を医療スタッフ全員が容易に理解し, 把握できる事を目的にレーダーチャート方式による医学的総合機能評価を試みた. 更に評価に用いた各指標を統計学的に検討し, 主要診断別の病態・機能の特色を明らかにするべく試みた. 対象は, 1997年5月時, 当科入院中の50例 (男性12例, 女性38例, 年齢73~101歳, 平均85±5.4歳) を対象とし, 主要診断名, 精神機能, 身体機能, 栄養, 全身合併症, 冠危険因子, 社会背景のデーターベースを作成し, 最終的に主要診断名以外の各因子をスコア化したものでレーダーチャートを作成した. その結果, (1) 本法は老年者個々人の全体像を医療スタッフ全員が容易に理解し把握するのに有用であると同時に, 各主要診断別病態の特色をパターンで認識するためにも有用と思われた. (2) 脳血管障害群では精神, 身体, 栄養の三指標間相互に有意の正相関を認め, 治療, 看護, リハビリ等のケアプラン作成上, これら三つの指標に対して, より総合的に戦略を立てる必要性のある事が示唆された. (3) 一方アルツハイマー型痴呆群では身体, 栄養の二指標間に正相関を認めるのみで, 精神機能との関連では唯一罹病期間との間に有意の負の相関を認めた. 即ち本症では, 精神機能と罹病期間の関係を念頭に, そのQOLに重点を置いたケアプラン作成が重要課題と思われる. (4) 後期老年者あるいは超老年者においては, 身体, 精神機能に対するケアと同等かそれ以上に, 栄養学的評価とそれに基づく栄養ケアの重要性が示唆された.

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