日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
肝嚢胞が感染後に著明な縮小を来した老年者の1例
山口 寛大庭 建三矢野 誠岡崎 恭次猪狩 吉雅鯉渕 仁佐藤 周三鈴木 達也中野 博司妻鳥 昌平
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キーワード: 肝嚢胞, 感染性肝嚢胞
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1999 年 36 巻 5 号 p. 369-372

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抄録

症例は70歳, 女性. 67歳時に糖尿病および肝嚢胞を指摘される. 69歳時, 胆石症と急性胆嚢炎にて加療, この時の肝嚢胞は径6cmであった. 平成9年12月11日, 発熱および右季肋部痛にて入院, 急性胆嚢炎の診断で抗生剤投与を受け1週間で軽快退院. 平成10年1月13日, 精査目的に当科入院. 右季肋部に表面平滑, 弾性硬の肝を3横指触知, 同部に圧痛を認め, CRPおよびALP, γ-GTP, LAPの軽度の高値を認めた. 入院時より微熱が持続していたが, 1月26日白血球増多とともにGPT 45IU/l, ALP 1399IU/l, γ-GTP 333IU/l, LAP 249IU/lと上昇し, CTで肝嚢胞壁にリング状濃染を認め感染性肝嚢胞と診断した. セフォゾプランの投与にて諸所見は改善し, 2月16日退院となった. 逆行性胆管造影では嚢胞と胆管の交通は認めなかった. 6月30日のCTおよびエコー所見で肝嚢胞は径1cm程度に縮小し, 腹部の肝腫大所見も消失していた, 感染性肝嚢胞が外科的ドレナージなしに抗生剤投与のみで改善ならびに嚢胞の著明な縮小を認めた報告はない.

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