日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
インスリン抵抗性
門脇 孝
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1999 年 36 巻 6 号 p. 389-395

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抄録

インスリン抵抗性の成因は遺伝素因, 肥満などの生活習慣, 高血糖それ自体に大別される. 肥満に伴うインスリン抵抗性は肥大した脂肪細胞から分泌されるTNF-αや遊離脂肪酸 (FFA) が関与している. インスリン抵抗性の分子レベルでの共通の特徴は, (1)インスリン受容体チロシンキナーゼ・P13キナーゼ活性の低下, (2)GLUT4トランスロケーションと糖取り込み低下, (3)グリコーゲン合成酵素活性低下である. インスリン抵抗性は, 膵β細胞のインスリン分泌能や増殖能に障害のある場合には, 2型糖尿病の強力な発症要因となる. 最近, 糖代謝に関するインスリン作用に加えて, 血管や腎でのインスリン作用が解明されつつある. IRS-1欠損マウスはインスリン抵抗性のモデル動物である, シンドロームXの諸徴候を呈する. 今後, インスリン抵抗性の分子機構の解明により, 2型糖尿病やシンドロームXをはじめとするインスリン抵抗性症候群のより良い治療・予防を目指すことが重要である.

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