日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
要介護老年病患者の認知・身体機能
介護療養型医療施設における断面調査
峯廻 攻守加藤 隆正阿蘇 貴久子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 37 巻 3 号 p. 225-232

詳細
抄録

要介護老年病患者の基礎疾患群別病態特性把握を主目的とし, 1998年4月に当院入院中の全入院患者を対象として, 日本語版 Minimum Data Set (MDS), N式老年者用精神状態評価尺度 (NM), N式老年者日常生活動作能力評価尺度 (N-ADL) を用いて行った認知機能および身体 (基本的日常生活動作: ADL) 機能についての断面調査の検討結果を報告する. 疾患は脳血管 (C), 老人性痴呆 (D), 骨・関節 (B), パーキンソン病 (P), その他 (O) に分類した. 栄養機能評価尺度として血清アルブミン (SA) を用いた. また看護度 (生活の自由度, 観察度) も検討に加えた. 女性は男性に比し, 平均で2.9歳高齢で (p<0.0001), 疾患ではB>D>C>Pの順に高齢 (p=0.002) であった. 全患者群およびC群では, 年齢はMDSによるADL, 観察度を除く他の評価尺度とすべて有意 (p<0.05) の負の相関を示すも, D・B群では認知機能評価尺度との間にも相関はなく, Pでは全く相関を示さなかった. 認知機能はB>C>P>Dの順に高かった (p<0.0001). 一方, ADLはB>D>C>Pの順に高かった (p<0.0001). C・P群ではSAは認知・ADL両機能評価尺度と有意 (p<0.05~p<0.0001) の正相関を示したが, D群ではSAはADLとの間にのみ有意 (p<0.05) の正相関を示した. またB群では, SAはすべての評価尺度との間に一定の相関は示さなかった. 全患者群およびすべての疾患群において, MDSによる認知・ADLの評価尺度は, NM, N-ADLとそれぞれ有意 (p<0.0001) の正相関を示し, 看護・介護の臨床における認知・ADL評価のスクリーニング上, MDSによる評価尺度は妥当性ありと判断された. QOL重視の要介護老年病患者の医療においても, 老年医学的総合機能評価導入は重要課題であると同時に, その実践結果よりみても「介護」は一括りで論ずるべきではなく, 個別性重視の視点からも, 更なる基礎疾患群別検討を含めた, 各種階層別研究, 検証とそれに基づく医療が不可欠である.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top