慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者における抗コリン薬吸入の呼吸生理学的効果と生活の質 (QOL) への影響を評価した. 80歳以上のCOPD患者12名について, 抗コリン薬吸入前後で安静時肺機能, 呼吸筋力を測定し, 運動負荷試験によって運動時換気動態と運動時呼吸困難感を調べた. さらに, 吸入療法前後一カ月の生活の質を評価した. 抗コリン薬吸入によって肺活量, 一秒量が増加し, 残気率が低下した. 呼吸筋力は最大吸気圧 (PImax) が増加した. ボルグスケールで評価した運動時呼吸困難感は Borg scale slope (ΔBS/ΔVO2) が有意の低下を示した. St George's Respiratory Questionnaire で評価したQOLスコアは, 吸入療法一カ月後で改善がみられた. したがって, 高齢COPD患者について, 吸入抗コリン薬療法の導入によって生理学的改善のみならず, QOLの改善も望める可能性が示唆された.