日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
転移性眼窩腫瘍で発見され急速に進行した高齢者肺腺癌の1例
黄川田 雅之清水 聰一郎宇野 雅宣赤沢 麻美杉山 壮大野 大二岩本 俊彦高崎 優
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 38 巻 4 号 p. 560-563

詳細
抄録

症例は88歳女性. 2000年5月に右眼球の異物感を自覚し近医受診したところ, 眼窩腫瘍を指摘されたため当院紹介受診となった. 受診時に胸部X線で右中肺野に約3cm程度の腫瘤状陰影を認めたことから, 精査目的にて5月23日に当科入院となった. 右B3からの経気管支肺生検 (TBLB) で肺腺癌と診断し, 眼窩部の腫瘍は肺癌からの転移性病変であると判断した. 眼窩部への放射線療法を行うものの効果なく, 腫瘍は急速に増大し肝臓への浸潤と副腎, 腎への転移も認め, 全経過約2カ月で永眠した. 転移性眼窩腫瘍は画像診断技術の向上に伴い近年報告例が増えているが, 一般的にその予後は非常に悪い場合が多い. 特に肺からの転移の場合は眼症状が先行することが多く, 症状出現後の生存期間はきわめて短い. 本例のように転移性眼窩腫瘍は眼症状が先行することもあり, 今後高齢者でもますます増加が予想されることから, 十分な全身検索が必要であると考えられた.

著者関連情報
© 社団法人 日本老年医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top