日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
摂食・嚥下リハビリテーションの導入により嚥下性肺炎を生じることなく経口摂取が可能となった脳血管障害の2症例
須藤 英一田沼 志保樋口 直樹吉田 章高橋 義彦小林 力大浜 用八郎大久保 昭行
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2001 年 38 巻 4 号 p. 554-559

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抄録

当院で脳血管傷害後, 理学療法・作業療法・言語療法を取り入れた摂食・嚥下リハビリテーション (以下嚥下リハと略す) を行い, 嚥下機能の改善を認めたと考えられる2症例を経験した. 症例は82歳と68歳の脳血管障害後遺症の男性2例. 嚥下リハは, 間接訓練としての嚥下体操, アイスマッサージ, 頸部・顔面のマッサージ, 発声練習, 空嚥下パターン訓練と, 直接訓練として摂食時の指導, 食事器具の工夫, 食塊の検討, 家族指導も含め適宜少なくとも4週間から6週間行った. 1例目は入院中に嚥下性肺炎を生じ, 嚥下リハ前むせを数回認め水飲み試験スコア2であった. 嚥下リハ後は摂食時むせを認めず, スコア1まで改善し嚥下性肺炎を再発することなく経口摂取が可能となり, 内科病棟から長期療養型病棟へ転棟となった. また, 嚥下リハ開始時, 全介助レベルであったADL (Activities of Daily Living) も, 起居動作, 排泄動作自立となり, 歩行は監視レベルまで可能となった. 2例目は持続的経鼻経管栄養 (continuous naso-gastric; CNG) チューブを留置し絶食の状態で当院に転院してきたが, 嚥下リハ後は摂食時のみに間欠的口腔食道経管栄養 (intermittent oro-esophageal; IOE) チューブを挿入し経管栄養を注入, 経口からは“おやつ”程度の摂食が可能な状態となり退院となった. なお2例目に施行した videofluorography では明らかな誤嚥が認められたが, 横向き嚥下 (右回旋90度) では誤嚥がみられなかった. 症例数は現時点で少ないが, 今後も症例のタイプや重症度を考慮しつつ, 当院でも嚥下リハを継続する有用性が期待された.

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