日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
高齢悪性腫瘍患者におけるサイトメガロウイルス腸炎の1例
森本 尚孝橋田 英俊本田 俊雄相原 泰
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2002 年 39 巻 1 号 p. 97-100

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抄録

症例は83歳, 男性. 平成9年10月に当院耳鼻科にて左耳下腺癌と診断された. 高齢ということで手術は希望されず, 化学療法と放射線治療を施行した. 平成9年12月から平成12年7月までにCAP療法 (Cyclophosphamide, Adriacin, CDDP) を計6クール施行した. 全身状態の改善目的で平成12年7月15日より prednisolone 15mg/day が開始となった. 平成12年8月2日に下痢が出現した. 翌3日に発熱, 腹痛も出現するため当院救急外来を受診し, 急性腸炎で入院となった. 8月10日に下血し, 緊急大腸内視鏡検査にて, 下部直腸に出血を伴う潰瘍性病変を認めた. 生検組織では封入体細胞と抗サイトメガロウイルス抗体染色で陽性細胞を認め, サイトメガロウイルス腸炎と診断した. Gancicrovir 投与にて解熱し下血や下痢も消失した. 11月に大腸内視鏡検査を再検したが潰瘍性病変は消失していた.
サイトメガロウイルス腸炎は日和見感染症であり, 癌患者や高齢者においては免疫力が低下しているため発症の可能性がある. 治療法としては Gancicrovir が有効である. 免疫不全患者において下痢や下血のような消化管症状を起こす場合はサイトメガロウイルス腸炎を鑑別に入れ, 早急に大腸内視鏡検査を行うことが重要である.

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