日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
脳血管像よりみた脳血管障害
319自験例の検討
冨田 卓森山 昌樹石森 彰次美原 博
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1967 年 4 巻 5 号 p. 276-283

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抄録

最近10カ月間に脳血管障害を疑われて入院した657例に, 原則として Four vessel angiography を施行した結果を検討した. さらに剖検例については可及的に超軟X線による屍脳脳血管撮影を行ない, 脳血管写の所見と比較検討して, 臨床所見の解明に資するように努めた.
われわれの成績では臨床症状と明らかに合致する陽性所見を呈したものは319例中147例 (46%) であり, 異常所見から病状を肯定せしめるものの, 全般を解釈するにやや不十分のもの55例 (17.5%) である.
入院時臨床診断と脳血管像とを対比してみると, 定型的な脳出血型61例中, 16例の脳内血腫, 7例の動脈瘤または動静脈奇型がみられた. 臨床上脳軟化と診断された171例中完全閉塞のみられたもの44例, 50%以上の狭窄像を呈するもの12例であった. また入院時広範な脳動脈硬化症と考えられた68例のうち硬化病変を指摘でき, 他に特異的所見のみられなかったものは44例であった.
一方脳出血と診断された35例のうち, 7例の中大脳動脈閉塞, 1例の脳腫瘍を見出し, 脳軟化と診断された171例中, 10例の脳内血腫, 5例の動脈瘤, 1例の脳腫瘍, 3例の硬膜下血腫が混入していたことは注目に値することであろう. 閉塞を立証した70例の内訳は内頸動脈分岐部11例, 中大脳動脈56例, 後大脳動脈1例, Willis 輪の一部閉塞1, 矢状洞閉塞1例で, 後2者は脳血管撮影なくしては診断不能であったと考える.
脳血管撮影の合併症については, 319例に対し314例に bilateral carotid angiography が, 191例に bilateral brachial angiography が行なわれ計1,256回の穿刺に対し13 (1.1%) の一過性の合併症を認めたにすぎない (頸部血腫7, 悪寒3, 脱力1, 呼吸困難1, ショック1).

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