遅発性尺骨神経麻痺は骨折, 関節炎, 先天的奇型, 腫瘍等による肘関節の損傷後数年ないし数十年後に徐々に尺骨神経麻痺をきたしてくる疾患で中年以後に発症してくることが多く, また小手筋群萎縮がもっとも目だつ症状であるため, cervical myelopathy, scalenus anterior syndrome, motor neuron diseases, hypothenar neural atrophy (Hunt) などとの鑑別が必要である. われわれは, 原因となる損傷後40年以上たって発症した上腕骨々折に基づく2例, 軟骨性外骨腫による1例, 計3例の本症を報告し, 整形外科的手術が有効であることから本疾患を早期に正しく診断するよう注意すべきであることをのべた.