日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ユビキチンシグナリングとその生物学的意義
村田 茂穂田中 啓二
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2004 年 41 巻 3 号 p. 254-262

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抄録

ユビキチンは真核生物に高度に保存された76アミノ酸からなる小さなタンパク質である. ユビキチンはタンパク質に共有結合することにより, 翻訳後修飾分子として作用するが, ユビキチンの結合の仕方には多様性が存在し, それぞれの伝えるシグナルが異なることが明らかとなってきた. 最もよく知られているのが, ユビキチンの48番目のアミノ酸のリジン残基 (K48) を介したポリユビキチン鎖がプロテアソームによる分解のシグナルになることである. このいわゆるユビキチン・プロテアソームシステムは細胞周期, シグナル伝達, 免疫応答, タンパク質品質管理をはじめとした細胞のあらゆる現象に関与していると言っても過言ではない. 一方で, 最近急速に脚光を浴びつつあるのがユビキチン化が分解以外のシグナルを伝えることである. この場合はK48ではなくK63を介したポリユビキチン鎖やモノユビキチン化が, クロマチン制御, エンドサイトーシス, 小胞輸送, DNA修復, キナーゼの活性化など実に多彩なシグナルの仲介因子となることが明らかになってきた. しかし, なぜこれらのユビキチン化がシグナルとなりうるのか, 詳細なメカニズムは依然として謎に包まれたままであり, 今後の研究の発展が待たれる.

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