日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
健康や感染症に対する一般大と医療従事者の考え方の違いに関する検討
加齢の影響を中心に
有田 健一西野 亮平
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2005 年 42 巻 1 号 p. 67-73

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抄録

入院患者の多くが高齢者である高齢社会では, それを診療し看護する医療従事者ははるかに若年の者である場合が多い. しかし一般人と医療従事者とはもともと医療に関しては考え方が異なっている可能性があるし, 加齢の影響を考慮に入れれば考え方に差があってしかるべきかもしれない. そこでアンケート調査によって両者の健康や感染症に対する考え方を比較した. 健康に対する関心は医療従事者に比べて一般人で強く表現される傾向がみられた. 一般高齢者が健康のためによいと考え実行している生活習慣は, 医療従事者が指導している生活習慣よりも重点の置き方が異なっていた. 今後の高齢者感染症に対して医療従事者は, 在宅医療との結びつきを強く意識した. 実際の医療においては耐性菌の出現を防ぎ, 体力や年齢を考えた個別の治療を認め, 一方ではセカンドオピニオンにも考慮する姿勢を示した. しかし一般高齢者からは, 良い結果を生む医療であればそれがもたらす問題 (たとえば耐性菌出現など) は容認しようとする姿勢さえみられた. このように一般人と医療従事者の間には考え方に差があり, 特に高齢者では身の回りで生じる変化を健康と関連付けて考える傾向であった. 医療従事者は, 一般人との間に存在する考え方の違いや加齢による影響を考慮に入れながら, 行うべき教育・指導や医療に取り組み, 一方では一般人の思いにも配慮する度量が必要である.

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