日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
在宅ケアの質評価法 (Home Care Quality Assessment Index: HCQAI) の開発
荒井 由美子熊本 圭吾杉浦 ミドリ鷲尾 昌一三浦 宏子工藤 啓
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2005 年 42 巻 4 号 p. 432-443

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抄録

目的 本研究は, 1) 要介護高齢者の状態, 2) 介護者および介護の状況, 3) 居宅内の介護環境の3領域から在宅ケアを総合的に評価する方法として, Home Care Quality Assessment Index: HCQAIを作成することを目的とした. 方法 はじめに, 評価項目原案を作成し, それぞれの項目についての信頼性の検証を行った. 信頼性は, a) test-retest 信頼性および, b) 異なる検者間における評価の信頼性の2点を検討した. 調査は, 岡崎市医師会訪問看護ステーションを利用する要介護高齢者とその家族介護者を対象に実施した. 各評価項目の test-retest 並びに検者間信頼性については, 原則的にκ係数0.4以上を基準とした. 上記の条件を満たした項目について, 因子分析を行い, 10の尺度を作成した. 結果 この尺度の内的整合性 (信頼性) を示す Cronbach のα係数は, 0.6~0.9であった. これら10の尺度のうち, インプット (居宅内の介護環境) に相当するものとして,「段差解消」尺度と「水まわりの改修」尺度の2つが該当し, プロセス (介護者および介護の状況) に相当するものとして,「適切な着衣」尺度,「不適切な処遇」尺度,「衛生と介助」尺度の3つの尺度が該当し, アウトカム (要介護高齢者の状態) に該当するものとしては,「認知」尺度,「麻痺」尺度,「視聴覚」尺度,「ADL」尺度,「粗大運動」尺度の5つの尺度が該当した. 結論 今回作成した41項目からなるHCQAIは, 専門職の観察により, 在宅ケアの質を, 客観的かつ総合的に評価するものである. 在宅ケアの質を, 客観的かつ総合的に評価する評価法は, 世界的に見ても数少ない. 今回, 開発されたHCQAIは, 在宅ケアにおけるインプットやプロセスを, 専門職の観察により客観的に評価するという点において, 他に類をみないものであり, 在宅ケアの質を向上させていく上でも有用であると考えられる.

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