日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
間葉系幹細胞を用いた骨の再生医療
山田 陽一上田 実
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2006 年 43 巻 3 号 p. 338-341

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抄録

目的: 歯周疾患に罹患する患者数は約4,200万人, 骨粗鬆症に罹患している患者数は約1,000万人とされる. 歯周病により歯槽骨吸収をきたすと有効な治療法はなく, さらなる吸収を予防するにとどまる. また, 骨粗鬆症に対しても実際に治療が行われているのはごく一部である. さらに, 歯牙喪失時, 義歯等により修復がなされるが, 違和感, 痛みに悩まされ, QOL低下はゆがめない. 近年, インプラント (人工歯根) による咬合再建も可能であるが, 骨量不足時などは骨移植が必要となる. しかし, 自家骨採取は侵襲が大きく, 特に, 老齢となれば新たな健常部位に侵襲を加えたくないのはなおさらである. 方法: われわれは幹細胞を用いた再生医療的手法を用いることとした. 再生医療の3要素の内, 歯周病, 歯槽骨再生の幹細胞には, 腸骨骨髄より分離した未分化間葉系幹細胞 (MSCs) を, 足場, 生理活性物質には自己多血小板血漿 (PRP) を用いた. この骨再生法は注入型培養骨と呼んでおり, 低侵襲組織再生療法である. また, 骨粗鬆症に対してはMSCsを応用することとした. 結果: 歯周病, インプラントのための歯槽骨再生, 腫瘍切除後の骨移植患者に対する骨延長, 顎裂部骨移植症例に対し, 注入型培養骨を応用し, 良好な結果が得られた. また, 骨粗鬆症モデルにおける骨密度低下に対し, 幹細胞を注入することで, 良好な改善が得られた. 結論: 注入型培養骨は, 低侵襲で, 免疫拒絶を受けにくく, 注入型であることにより複雑な形態に対しても応用可能で, 細胞の再利用も可能などの利点を持ち合わせており, 老齢化社会においても有効であると考えられた. さらに, 加齢とともに危険性が上昇する骨粗鬆症に対しても, 細胞治療による改善が示唆された. このようなアンチエイジング医療による細胞治療法はQOL向上に役立ち, 高齢者の幸せな健康寿命を獲得する上で有効であるとも考えられた.

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