日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老化抑制遺伝子 klotho と血管内皮機能
斎藤 勇一郎倉林 正彦中村 哲也永井 良三
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2006 年 43 巻 3 号 p. 342-344

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抄録

Na+/H+逆輸送担体を過剰発現するトランスジェニックマウスの開発中に, 偶然, 導入遺伝子がマウスの未知遺伝子をノックアウトしたことにより, ヒトの老化によく似た特徴を示す老化モデルマウスが確立された. 原因遺伝子は, ギリシャ神話の「生命の糸を紡ぐ女神」にちなみ klotho と名づけられた. すでに, 原因遺伝子 klotho とそのcDNAが単離同定され, mRNAレベルでの発現様式も明らかになっている. このklotho マウスのホモ接合体は僅か10~12週齢で老化により全例死亡する. すなわち, 一種の早老状態にある. さらに, アデノウィルスベクターを用いて klotho 遺伝子の導入を行うことにより, 老化徴候が改善されることが明らかとなり, 老化抑制作用を持つ可能性が考えられる. 我々は, klotho 遺伝子欠損マウスにおいて血管内皮機能障害と一酸化窒素 (NO) 産生障害があることを明らかにした. また, 酸化ストレスが亢進していることも報告されている. これらの結果より klotho 遺伝子はNO産生の増加と酸化ストレスを抑制し, 臓器保護に働くと推測される.

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