日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
老年者胸部単純側面写真よりみた大動脈陰影の臨床病理学的研究
村松 睦梁瀬 誠岩本 昌昭岡野 一年奥平 雅彦
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1968 年 5 巻 3 号 p. 274-280

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抄録

最近, 心血管系の動脈硬化性疾患の予防管理は, いわゆる成人病対策上きわめて重要である.
われわれは, ここ数年来, 臨床上容易にえられる胸部側面レントゲン写真上の大動脈影の出現度を追求し, その明瞭度よりI~IV度に分類して, 高血圧症, 脳血管障害, 心電図変化などとの相関性を調査し, また, 最近の本院における剖検例についても陰影形成因子について検討した. 対象としては, 本院入院患者および外来受診者と附属老人ホーム入居者319名を調査対象とした. 臨床的には, 高血圧継続者・脳卒中後遺症者は動脈硬化進展者にみられるところのIII~IV群を呈する者が多く, また心電図上ST偏位を示すものもIII~IV群に多い, その他の臨床検査成績も, だいたい, われわれの分類に相関する. また, 剖検例についても, 生前のX線分類でI~II群の者とIII~IV群の者では肉眼的検索および大動脈のスダンIV染色, 超軟線X線撮影上の石灰化巣の追求からも, 明らかに粥状硬化所見が後者に著明に認められた. また, 組織学的所見においてもIII~IV群大動脈壁の中膜は過伸展され菲薄化しているが, 内膜は膠原線維の増生, コレステリン沈着, 石灰化が著明となっており, 陰影形成因子の主体となっている点を明らかにした. 以上の諸点より日常容易にえられる胸部側面X線写真上の胸部大動脈影の分類観察が動脈硬化病変の管理上有用であるとの結論をえた.

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