日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
加令と肝ライソソーム酵素の変動
玉熊 正悦石山 賢小泉 澄彦高野 達哉後藤 佐多良
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1969 年 6 巻 6 号 p. 400-406

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抄録

最近, Lysosome 酵素の膜外遊出と各種の代謝異常やショックの重症化などとの関連性が注目され, とくに細胞の老化, 臓器の加令に伴う変化などにも Lysosome 膜の透過性亢進ないし膜外に遊出した Lysosome 酵素の影響している可能性が指摘されている. 果して動物やヒトの肝臓で, Lysosome 顆粒の膜透過性ないし解裂の度合に老若の間で差があるか否か検討した.
肝組織を0,25M Sucrose を含む Tris Buffer で homogenize し, 超遠沈でえた上清分画と Lysosome 顆粒分画について, それぞれ従来から Lysosome に局在することの知られている酵素活性を測定し, 上清分画の活性Sと顆粒分画の活性の比で Lysosome 酵素膜外遊出の程度とした. その結果 acid RNase を指標とする限り, マウスやハムスター肝では上述のS:P比が加令とともに増加し, 6週目の値に比較して2年目ではほぼ倍に達していた. これに反しモルモットでは加令とともに幾分S:Pの増加傾向を認めるが, 個体間のバラツキが大きく一定の相関を認めがたかった.
次に上腹部疾患で開腹術が行われ, 術前肝機能に異常がない25才より85才までの23例について, 術中の生検材料から同様の検討を行った. この際ヒト肝の acid RNasc 活性 Peak はpH 6.0にあり動物の Peak (pH 4.5) より中性例にあるため緩衝液として動物の際の Acetate Buffer の代りに phosphate Buffer を用いた. その結果 acid RNase はヒトでもやはり加令とともにS:P比の増加することを確認したが, β-glucuronidase には年令との相関を認めなかった. Lysosome 膜透過性ないしS:P比の加令による影響が, 指標をする酵素の種類や動物の種により異る理由は必しも明らかでないが, RNA分解酵素の Lysosome 膜外活性が年令とともに増加する上述の成績は, 著者らがすでに報告したヒト肝含量の加令による減少傾向と合わせ興味ある所見と考える.

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