日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
ネフローゼ症候群における血漿中 Lecithin: Cholesterol Acyltransferase の活性に関する研究
伊藤 昌孝
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1969 年 6 巻 6 号 p. 420-427

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抄録

ネフローゼ症候群の患者および抗腎血清による実験的ネフローゼ症候群のネズミについて, 血漿の lecithin: cholesterol acyltransferase (LCAT) 活性を測定し, 血漿コレステロールおよび燐脂質濃度と比較検討するとともに, LCAT とネフローゼ症侯群における高コレステロール血症の成因との関係について考察を加えた.
ネフローゼ症候群の場合には血漿をそのまま incubation することによる遊離コレステロールの減少率は, 対照に比べて大幅に低下しているが, 血漿コレステロールの増加が著明なために, 実際に血漿1mlあたりで単位時間内にエステル型に変化したコレステロールの量には, ほとんど変化がないか逆に軽度に増加しているとの結果をえた. 不活化人血漿を基質として用い, 反応系における基質の変化による影響を除外して検討した結果, 実験的ネフローゼ症候群においてLCAT活性は低下しておらず, 逆に軽度に亢進している時期もあるとの成績をえた. しかしその亢進の程度は血漿コレステロールの大幅な増加に比べると軽度である. そのために, 増加するコレステロールを十分に処理できない場合があると考えられた. 実験的ネフローゼ症候群の発症後4日目の時点でエステル比の低下が認められたが, これは肝における遊離コレステロールの合成の亢進と, それに対応しえない LCAT 活性の相対的不足の結果と考えられる.
LCAT活性は生体内でのエステル型コレステロールの turnover と関連していると思われるが, ネフローゼ症候群の場合にLCAT活性が亢進しているが, 遊離コレステロール量にくらべて相対的には不足している本研究の結果は, ネフローゼ症候群においては血漿のエステル型コレステロールの turnover rate は増加しているが, turnover time は延長しているとの最近の McKensie らの報告と一致している.

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