抄録
加令に伴いCa代謝が変化する事は古くから指摘されており, 老化と共に軟部組織のCa沈着が増加することや骨粗鬆症の頻度が増加する事は周知の事実である. かかるCa代謝の変化が如何なる機序によるものか不明であるが, Ca代謝の重要な調節因子である副甲状腺ホルモンおよびカルチトニンの分泌, 代謝および作用の変化が重要な意義を有する可能性がある. 著者は以上の観点からまずカルチトニンの役割りにつき以下のごとき検討を行なった. 生後37~47日, 90~118日および1.5年の Holtzman 系ラットにつき, 1) CaCl2負荷による高Ca血症からの血清Caの回復状態の比較, (2) 甲状腺焼灼による血清Ca低下作用の比較, (3) 外因性カルチトニン投与による血清Ca低下作用の比較, (4) 甲状腺内カルチトニン含量の測定, 等を行ない加令による影響につき検討した. その結果甲状腺からのカルチトニンの分泌および甲状腺内のカルチトニン含量は加令により影響をうけないが, 内因性および外因性カルチトニンに対する骨の反応が加令に伴い著しく減弱することが見出された. CaCl2負荷による高Ca血症からの血清Caの回復も加令と共に著しく遅延し, その原因としては加令に伴う骨代謝特に骨吸収の減少が考えられた. 一方副甲状腺ホルモンに対する反応は老ラットにおいても比較的良好であったので, これら二つのホルモンに対する反応性の相異が老化に伴う骨変化発生の基礎となる可能性が示唆される.