日本老年医学会雑誌
Print ISSN : 0300-9173
コレステロール代謝に及ぼすエラスターゼの作用
中村 治雄石川 昌子
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1971 年 8 巻 5 号 p. 225-232

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抄録

DD系マウスを用い, エラスターゼは純度30%, 50%で Sachar 単位でそれぞれ12単位, 20単位/mgのものを用いた.
A. 血液コレステロール (以下chと略す): (1)正常動物に30%, 50%を1mg/kg/日, 15日間注射しても変化なかった. (2)ch負荷動物に純度30%を1mg/kg/日, 12日間注射すると血液chの増加は抑制された. (3)ch負荷動物に純度30%を20mg/kgを1日2回経口投与は血液chの増加を抑制した. (4)プロマイシン3mg/100g/日, 7日間の注射による高ch血症は純度30%を8.5mg/kg/日の併用により抑制された.
B. 肝chの生合成: (1) in vitro で純度30%の添加は酢酸-1-14C, メバロン酸-2-14Cからのとりこみを抑制した. (2)純度30%の注射は酢酸-1-14Cからのとりこみは増加したが, メバロン酸からの変化はなかった.
C. 肝の酸素消費: ch負荷による肝のO2消費の低下は純度50%を1mg/kg/日, 14日間注射することにより抑制された.
D. chの吸収: 純度30%を0.2%加飼料で4日間飼育後胃内ch-4-14Cを注入, 6時間30分後の血液, 肝の放射能には変化なかった.
E. ch-4-14Cに由来する物質の胆汁への排泄: (1)放射性物質注射後, 純度30%2mg/kg/日, 10日間注射後の胆汁では変化なかった. (2)純度30%を4mg/kg/日, 5日間注射後, 放射性物質注射後48時間目の胆汁の放射能は増加した.
F. 肝ミトコンドリアのch-26-14Cの酸化は添加では変化ないが, 2mg/kg/日, 15日間注射動物のミトコンドリアでは増加した.
G. ch-4-14Cに由来する物質の糞への排泄: (1)正常動物にch-4-14C注射後, 純度30%を4mg/kg/日注射, 10日間に排泄された糞への胆汁酸-14Cは増加した. (2)ch負荷飼料で2日間飼育後ch-4-14C注射後純度30%を4mg/kg/日注射, 10日間に排泄された糞の総-14C, 胆汁酸-14Cは増加した.
以上のことから血液コレステロール低下作用の機序には異化作用の増加, 胆汁酸の排泄の増加が関与すると思われる.

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