遺伝学雑誌
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X線に因つて生じた家蠶の新形質セーブル斑紋蠶
田島 彌太郎
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1938 年 14 巻 3 号 p. 117-128

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抄録
(1) ホモの黒縞黄血の雌蛹に X 線を照射して之に形蠶白血の雄を配した F1 にセーブル斑紋蠶 (Saにて表示) と名付ける1頭の突然變異體が見出された。
(2) セーブル斑紋は姫蠶に對し上位, 形蠶•暗色蠶に等位, 黒縞蠶に對し下位である。
(3) SaP と對立因子をなすにも拘らず YSa との交叉價は1.8%に過ぎない。
(4) Sa は形態的特徴の外に劣性致死作用を伴ふ。致死作用は卵の點青期以前に發現する。致死の原因は缺失を伴ふ逆位の爲めと考へられる。
(5) Sa, Y 兩因子を同一染色體上に有する個體に Py を交雜すれば F1PSaY を得る。此の PSaY 雄を py 雌に配すれば再び少數ながら PSaY が得られる。後の場合に得られる PSaY 相互交配に於ては致死作用は消失する。
(6) 此の致死作用を失つた PSaY の出現は多分 Py 染色體と SaY 染色體の轉座, 或は兩染色體の永久的不分離現象に基くものであらう。
(7) Sa の成因に關して二つの想像説が存在し得る。一つは Ps→Sa なる因子突然變異であり, 他は Ps を主因子とする變更因子が存在し, 其の缺如に基因すると假定するのであるが, 恐らく後者の方がより妥當であらう。
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© 日本遺伝学会
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