遺伝学雑誌
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14 巻, 3 号
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  • 萩原 時雄
    1938 年 14 巻 3 号 p. 107-116
    発行日: 1938年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    アサガホは早咲種と晩咲種とに分けられる。この兩種間の雜種の開花時期は中間となり, F2 では中間, 早咲, 晩咲の三種が 9:3:4 の比に分離する。F2 植物の開花時期と, それ等の F3 植物の開花時期の間には r=+0.907±0.0187 なる關係がある。
    そこで開花時期は遺傳する形質で, 晩咲は早咲きに對して劣性で, 少なくとも二對の因子即ち早咲因子 early (ea) と晩咲因子 late (la) が關與する。日照の制限で開花の早められるのは勿論, 開花時期に關與する因子そのものが變化するためではない。花芽の分化の時期は開花時期に關する遺傳因子により決定される形質であるが, その遺傳因子が能力を發現して形質を現するに至るに都合よき状態が日照の制限により早く招來さるるに原因するものと考へられる。
    種子發芽の遲速も開花時期に影響する。遲く發芽すると概して開花も遲れる。遲い發芽が種皮の堅いのに原因する事がある。種皮の堅いために遲く發芽する形質は優性であるらしい。
    白色種皮のものは黒色種皮のものより若干發芽が早いから開花も若干早くなるものがある。
    尚, 花の着生位置も開花の早晩に關係がある。莖の下部殆んど地際に花の咲くものは precocious (pc) の因子に原因するもので早く咲く。然し, 是れと反對に下方の花芽が萎縮して上部のものだけ發達するものは tardy (ta) の因子に關するもので極めて晩咲となる。因に ta 因子は立田葉 maple (m) 因子とリンケーヂを有す。又, 晩咲因子 la は孔雀葉 pear (p) とリンケーヂを有す。
  • 田島 彌太郎
    1938 年 14 巻 3 号 p. 117-128
    発行日: 1938年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    (1) ホモの黒縞黄血の雌蛹に X 線を照射して之に形蠶白血の雄を配した F1 にセーブル斑紋蠶 (Saにて表示) と名付ける1頭の突然變異體が見出された。
    (2) セーブル斑紋は姫蠶に對し上位, 形蠶•暗色蠶に等位, 黒縞蠶に對し下位である。
    (3) SaP と對立因子をなすにも拘らず YSa との交叉價は1.8%に過ぎない。
    (4) Sa は形態的特徴の外に劣性致死作用を伴ふ。致死作用は卵の點青期以前に發現する。致死の原因は缺失を伴ふ逆位の爲めと考へられる。
    (5) Sa, Y 兩因子を同一染色體上に有する個體に Py を交雜すれば F1PSaY を得る。此の PSaY 雄を py 雌に配すれば再び少數ながら PSaY が得られる。後の場合に得られる PSaY 相互交配に於ては致死作用は消失する。
    (6) 此の致死作用を失つた PSaY の出現は多分 Py 染色體と SaY 染色體の轉座, 或は兩染色體の永久的不分離現象に基くものであらう。
    (7) Sa の成因に關して二つの想像説が存在し得る。一つは Ps→Sa なる因子突然變異であり, 他は Ps を主因子とする變更因子が存在し, 其の缺如に基因すると假定するのであるが, 恐らく後者の方がより妥當であらう。
  • 川口 榮作
    1938 年 14 巻 3 号 p. 129-138
    発行日: 1938年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    1. 白卵の遺傳子 w は宇田氏 (1932) によつて設定せられ, その正常因子 W と共に卵色のみならず複眼色, 神經球等の色素形成に關與する1對の多面的發現因子である。
    2. 白卵色と白眼色とは同一の遺傳子で起るにも拘らず, 黒卵黒眼種と交雜すると眼色のみは普通のメンデル單性遺傳を示すが, 卵色に至つては一見異常な分離を示す, 其の主要點を擧ぐれば,
    a) 黒卵を雌とし, 白卵を雄とすれば F1 は黒卵であるが, 白卵を雌とすると中間色を呈する。即ち母性的ではない。
    b) F2 に於ては上記何れの交配に於ても優性なる黒卵を生ずる。
    c) F3 に於ては黒卵, 中間色卵, 白卵の3種の蛾區を生ずる外, 中間色と白色を等分に含む混合卵蛾區を生ずる。その理論比は黒卵區12:中間色卵區1:白卵區1:混合卵區2の割合である。
    d) 逆交雜に於ては F1 (黒卵×白卵或はその反交雜) を雌とすれば雄の如何を問はず常に黒卵を生じ, 白卵を雌とし F1 と逆交雜すれば中間色卵と白卵を等分に含む混合卵の蛾區のみを生ず。
    3. この白卵色の異常なる遺傳の原因に就ては已に著者並に金 (1937) 及び吉川(1937) の試みたる生殖巣移植の實驗に, その解釋を求むることが出來る。即ち白卵白眼性蠶兒に黒卵黒眼性蠶兒の生殖巣を移植すれば, これより蛾の複眼に黒色々素を形成せしむるホルモン樣物質を生ずるのみならず, この物質は母體より卵原形質に入り次代の卵色を決定するものである。而して白卵白眼種はこの物質を分泌しない。この假説に從へば黒卵を雌とし白卵を雄とせる F1 が黒卵であるは當然であり, 白卵を雌とし黒卵を雄とすれば, 白卵よりはホルモンを傳へず, 黒卵からの精核には恐らくこの物質が存在せぬか, あるとしても白卵を黒卵とするに至らない。從つて産卵後暫時は白卵のまゝで居るが, この F1 の胚子の因子式は Ww なるが故に, この胚子の生殖巣から再び新にホルモンが分泌され卵内に分散し漿液膜に着色を促す, しかしその量少き爲め中間色以上に濃くはならぬ。又白卵 w の雌に F1 (Ww) を逆交配した場合に, 精核には二種あり即ち Ww であるが W により受精されたる白卵は前同樣の理由にて中間色と變り, w にて受精されたものは白卵のまゝで止る, 斯くて混合卵の蛾區が生ずる理由は明瞭である。
  • 萩原 時雄
    1938 年 14 巻 3 号 p. 139-147
    発行日: 1938年
    公開日: 2007/04/04
    ジャーナル フリー
    1. 從來の研究によると斑入葉リンケーヂ群には十二個の因子が屬することが明にされて居たが, 本報に述べられた研究により更に五個の因子即ち, dragonfly 3 (dg3), white flower (a4), yellow 3 (y3), interaxial green 2 (ig2), terminal 1 (t1) が新に本リンケーヂ群に加へられる。
    2. 次に示された各因子間のリンケーヂが研究された。
    リンケーヂ 組換價 リンケーヂ 組換價
    dg3-c1 35.2 dg3-B1 21.9
    dg3-v1 38.7,39.2 dg3-a4 25.4
    dg4-cd 39.3 cd-a4 30.1,35.3
    dg3-t1 34.2 y3-B1 44.9
    py-y3 37.7,41.4 py-B1 25.1
    py-ig2 24.6 y3-ig2 37.9
    t1-v1 44.3,39.2
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