抄録
夏目漱石の小説9篇と随筆1篇を助詞・助動詞の出現の仕方により分類した.対象とした作品(略号)は,書かれた順に,吾輩は猫である(Wa),坊ちゃん(Bo),草枕(Ku),虞美人草(Gu),三四郎(Sa),それから(So),門(Mo),こころ(Ko),硝子戸の中(Ga),道草(Mi)であった.助詞・助動詞の出現頻度を算出し,階層的クラスター分析と主成分分析を行った.その結果,Wa,Bo,Ku,Gu の群とSa,So,Mo,Ga,Ko,Mi の群に分類され,後者はSa,So,Mo,Ga の群とKo,Mi の群に分類され,随筆1篇(Ga)を除けば小説9篇は書かれた時期ごとに群を形成した.この結果は作品の傾向・特徴の変遷と関係するとみられるが,作家の精神変調の推移と関係するとしても矛盾しないと考えられた.文学作品の助詞・助動詞を通して,作家の病的なものを含む情緒や思想へのアプローチができることが示唆された.