遺伝学雑誌
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遺傳的矮性稻の葉の形態と葉緑素含量との關係 (豫報)
中山 包
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1939 年 15 巻 5 号 p. 272-280

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抄録

1. 3種の矮性稻, 夷 (AAbb) 大黒 (aaBB) 及び小大黒 (aabb) に就て葉の葉緑素量を比色法に依つて測定し, 之と常型赤毛 (AABB) とを比較した。
2. 此の4種の因子型の個體は若し葉の一定重量を以つて葉緑素量を比較するならば其の差は比較的僅かであるが, 葉の一定表面積に依つて較べる時は, 矮性型は一般に常型赤毛の約130-150%の葉緑素を有する。
3. 生葉の一定表面積に對する重量に就て見れば, 矮性型が常型よりも著しく重い。
4. 葉の組織を顯微鏡的に觀察すると, 矮性型では一般に小維管束の周圍で同化組織が甚だ肥厚し, 常型赤毛の約2倍の厚さがある。之に反し機動細胞に接する部分では却て狹窄されてゐる。
5. 矮性では常型に較べて柵状組織の細胞が明かに大きい。併し海綿組織の細胞では此の差は判然としない。
6. 同化組織の細胞層の數は矮性の方が多少多い傾向が認められる。併し此の違ひは同化組織全體の厚さに於ける程顯著ではない。
7. 細胞の配列状態の粗密に關しては確證は得られなかつた。
8. 要するに矮性稻に於ける葉色の濃緑なる主なる原因は,
i) 小維管束部に於ける葉肉の肥厚, 即ち柵状組織の細胞の長大と, 同化組織全體としての細胞層の増加。
ii) 同化組織對爾餘の組織の比率の大なること。
の2點に歸着することが出來る。

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