遺伝学雑誌
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アサガホに於ける花の形質に關する因子 stiff 並にそれと聯關をなす因子
萩原 時雄
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1939 年 15 巻 5 号 p. 281-286

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抄録

栽培家により筋金咲と云はれて, 花冠の維管束が堅いために普通の樣に開花出來ぬ花の遺傳は著者の已に報告せる如く普通花に對しメンデル性劣性で, 1因子 stiff (si) に關與す。
著者の先に報告した渦性因子 contracted (ct) と si 因子間のリンケーヂは其後, 6交雜の合計實驗數に基き16.4%の組換價を得て確證するを得た。鼻葉因子 side reduced (sr) は ct 因子と 23.3% の組換價を有し, 渦性聯關群 (Contracted linkage group) に所屬することは已に報告せる如くで, 其後更に交雜の研究により, 26.2%の組換價を得て, これを證した。又 ct 因子は節間緑色莖に關與する因子 interaxial green (igI) と強度の聯關をなす。
igI 因子は si 因子と 30.1%, 又 sr 因子と28.2%の組換價を以て聯關をなす事實は, sr, si 兩因子に關する1交雜に於て, 個體數僅少であり, 重複劣性個體が不出現のため組換價の算出は不可能であつたが, 其の分離状態の示す事實並に, 前述の sr, si, 兩因子間, ct, si 兩因子間, ct, igI 兩因子間の各聯關より考察して, sr, si 兩因子間に強度の聯間の存在を推定することが出來る。
今井氏は紫色花因子 purple (pr) は氏の所謂茶褐色聯關群 (Duskish linkage group) に所屬する旨報告されたが, 著者の研究は pr 因子は si 因子と 29.6%, 又 igI 因子と 42.3% の組換價を以て聯關を示すを以て, pr 因子は前記茶褐色花聯關群に所屬する茶褐色花因子 duskish (dk)と共に渦性聯關群に所屬される。
かくして, si, ct, sr, igI, pr の各因子は共に渦性聯關群に所屬し, 多分, 是等の因子は渦性染色體 (Contracted chromosome) 上に igI-ct-si-sr-pr の順を以て夫々因子座を占むるものと認める。

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