遺伝学雑誌
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家蚕胚子における生殖細胞の分布について
家蚕の生殖腺の発生に関する研究, 第3報
宮慶 一郎
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1952 年 27 巻 1-2 号 p. 48-55

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抄録

1) 家蚕においては他の昆虫とは異り, 生殖細胞は一定の環節にのみ分布するものではない. またその分布は系統により或は個体によつて変異を示す. 大顋節から第10環節迄のすべての環節に分布して居るが, 第6~8環節にあるのが普通である.
2) 生殖細胞の各環節への分布は出現の当初から既に定つて居ると考えられる. 即ち, 出現の初期, 胚帯形成期, 原始環節形成期直前及び形成後の生殖細胞の分布範囲はほぼ一定である. これは生殖細胞相互間に何等親和性がないために, 胚子の伸長に従つて生殖細胞がそのままの位置的関係を保ちつつ分散するためと考えられる. また頭部及び胸部に存在するのは, 胚子の伸長の際に何等かの原因によつて多少多く移動したものと推察される.
3) 生殖細胞の左右への分布も全く機会的であると考えられ, その比は個体によりかなりの変異を示す.
4) 第6~9環節以外に分布した生殖細胞は生殖腺形成には与らないで退化する運命にあるものと考えられる.

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