遺伝学雑誌
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Aegilops squarrosa の人為同質四倍体と Triticum Timopheevi との雑種 F1 の染色体対合
善如寺 厚
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1960 年 35 巻 10 号 p. 321-328

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抄録
T. Timopheevi (AAGG) と Ae. squarrosa 同質四倍体 (DDDD) との交雑を行なって6個体の F1 (AGDD) を得た。この F1 の中5個体は 2n=28で両親の配偶子染色体数の和に等しいが, 残る1個体は2n=29で1本だけ多い (AGDD+1)。
2n=28の F1 の染色体対合は70.3%で PMC で6~7, 29.7%で8~10の二価染色体がかぞえられた。同時に4.1%の PMC で 0~2III と0.2%で 0~1IV の多価染色体もみられた。1細胞あたりの平均対合は 0.0016IV+0.0428III+7.2476II+13.37I である (第1, 2表)。
この F1 のゲノム構成により最高対合の 10II のうち 7II は 4x-Ae. squarrosa の同親対合 (D-D) であることは明らかであるから, のこる 3IIT. Timopheevi の同親対合 (A-G) でなければならない。対合型の頻度から D-D 対合を除いて AG ゲノム間の対合量を計算すれば5個体平均4.71%で (第2表), これはすてに報ぜられた Emmer コムギの AB ゲノム間のそれ(木原1936, 近藤•釜野井1955~'58) に比べていくらか高い (第3表)。
多価染色体について三価は D-D の対合に A または G の1~2染色体が, 四価は D-D にそれと部分相同な A と G の染色体が対合して形成されたと思われる。
2n=29 F1 の結果は第4表に示された。染色体対合の状態から, 1個余計な染色体は D ゲノムに属すると思われ, 4x-Ae. squarrosa に生じた DD+1 配偶子に T. Timopheevi の AG 配偶子が結合した結果てあろう。この個体の AG ゲノム間の対合は2n=28の F1 と大差はない。
この実験を行なうにあたり多大な便宜を与えられ, 終始指導くださった中島吾一教授にあつく御礼申し上げる。
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