人間環境学研究
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論文
利き手の差異が心的加算課題におけるメタコントロール半球に与える影響
吉崎 一人八田 武志
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2003 年 1 巻 2 号 p. 2_1-2_7

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抄録

本研究の目的はHellige(1987)が提案したメタコントロールパラダイムを利用して、利き手とメタコントロール半球の関係を検討することであった。メタコントロールの概念は、Levy and Trevarthen(1976)が分離脳患者の結果から提案したもので、課題に優位な半球とは別に、課題遂行をコントロールする半球の存在を提案したものである。Hellige(1987)が、この概念を健常者に適用できるようにパラダイムを開発したのがメタコントロールのパラダイムである。このパラダイムでは一側半球に情報を投入する条件に加えて、同じ情報を左右両半球に同時に投入する条件を必要とする。一側視野の成績パターンと左右同時に呈示された条件での成績パターンを比較し、メタコントロール半球を推測するのである。我々は、右手利き群と左利き手群に対して心的加算課題を実施した。この課題は、1組の漢数字や算用数字が瞬間呈示され被験者に足し算を求めるものであった。Helligeのパラダイムを適用するためには、(1)左右両半球に同時に同じ情報が投入されること、(2)左右視野条件と実験条件の交互作用が見られること、が必要となる。そこで数字対は左視野、右視野、あるいは中央視野に呈示され、また数字対の組み合わせとして、漢数字対(三-七)、算用数字対(2-9)、漢数字・算用数字対(四-6)の3条件が用意された。その結果、左右視野と刺激対条件の間に交互作用が見られ、算用数字対条件においてのみ、利き手群間にラテラリティパターンの差異が認められた。つまり、右手利き群では左半球優位性が、左手利き群では右半球優位性がみられた。利き手群別にメタコントロール半球の分析を行った結果、各群ともメタコントロール半球の存在が示唆された。右手利き群においては中央視野成績パターンと右視野成績パターンが同様であり、左視野成績パターンとは異なるものであった。このことは、右手利き群では左半球が課題をコントロールしていることを示唆している。これに対して左手利き群においては、中央視野成績のパターンと同じパターンを示したのが左視野条件の成績であったことから、右半球が課題をコントロールしていることが推察された。これらの結果は、課題をコントロールする半球は、課題に対して優位な半球となることを示唆している。

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© 2003 人間環境学研究会
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