この小論はイギリス名誉革命期より18世紀前半に至る火災保険近代化の歩みを辿るものである。そのとき保険をなによりも信用制度として把握し,その中核となる保険信用つまり保険金支払いに対する信認の変遷に焦点が絞られる。最初にThe Fire officeが土地保障に基づく信用の創設を行った後,The Friendly Society等が追徴金と預託金に基づく信用を形成するが,やがてその中心は追徴金から預託金へと移行する。そしてThe Sun Fire Officeでは常設基金が登場し,最終的に二大特許会社が資本金と前払確定保険料をもつに至って,保険信用の近代化は完成する。この歩みは同時に,それぞれの時期に保険を構成した人々の利害関係を反映している。これを大きく地主階層(OWNER)のものと商人階層(TRADER)のものとに分けると,前者には土地所有が,後者には商品流通に伴う抵当制度と手形流通が深く関わっていることが判る。近代保険はこれら2つの要素の統合の下に誕生したのである。