貨物海上保険においては,運送中に保険事故が起こった場合,保険者はその事故による損害を保険金という形で被保険者に支払い,その事故が運送人の過失等による場合には,運送人と被保険者との間で締結された運送契約に基づき被保険者が有する運送人に対する損害賠償請求権を代位取得して,その損害賠償請求を運送人に対して行う。しかしながら,事故に係る運送人に損害賠償責任があっても,運送契約上の裏面約款や運送人の免責事由等により,損害賠償請求ができない場合もある。
最近船荷証券の元地回収という商慣習に関連して,運送人の損害賠償請求を争う紛争例では,裏面約款の仲裁規定により請求が棄却された裁判例が出現している。
船荷証券の元地回収は,今後も海上運送方法として継続して使用されると考えられるので,これにより生じる保険事故における損害賠償請求権の保険代位にも関心が深まると考えられる。
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