2016 年 78 巻 2 号 p. 65-111
本稿は,自動運転車の事故であっても,現行の「自動車+自賠責保険」の枠組み内において事故解決を行う場合,運転リスク低減に伴い顕在化する保険料率の低下が,自動車・自賠責保険および損害保険事業に与える影響について考察したものである。リスクと料率の関連については,長期にわたり料率低下を示してきた火災保険の経緯,および自動車保険の現在までの料率の推移から,各々のリスクの変遷を確認した。この結果,運転リスク低減の影響は,自動車・自賠責保険市場の縮小にとどまらず,現行の自動車保険,自賠責保険の料率決定方法に抜本的な改定を迫るものであることを指摘する。同時にこの改定は,消費者(契約者)が料率低下のメリットを最大限享受できる視点からなされるべきことを述べる。