損害保険研究
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<研究論文>
酒気帯び運転免責条項の解釈と行為規範性
三宅 新
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2018 年 80 巻 3 号 p. 113-144

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抄録

酒気帯び運転免責条項については,対象となる酒気帯びとはどのよう な意味か,及び,政令数値未満であっても免責を認めてよいかが争われ ている。従来の裁判例では,酒気帯びの解釈として決まり文句のように 外観認知基準が述べられており,その上で厳格説や酒酔い基準説のよう な分類に整理されている。しかし,実際に裁判例を見ると,当てはめと して外観認知基準を用いているかどれも疑わしいのが実情である。さら に,厳格説や酒酔い基準説は,そこに酒気帯び運転免責は状態免責であ るという前提が存在する。しかし,その状態免責の根拠は,これまで極 めて不十分な根拠によって主張されているにすぎず,その前提自体が誤 りであるとさえいえる。そこで,酒気帯び運転免責は酒気帯びに関する 行為規範への違反である,と結論付けることはできないだろうか。最大 善意について改正がなされた英国法からは,そのような結論を採っても 決して不当ではないことが導かれる。

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