オバマ政権の医療保険改革(オバマケア)について定めた連邦法は,民間医療保険の改革のために多くの規定(改革の手段)を定めている。それには,「州政府とクリントン政権の改革を受け継ぐ手段」(改革の連続性)と「新たに導入した手段」(改革の新規性)がある。本稿は後者の主要な手段を取り上げ,その内容と特徴について考察している。
「新たに導入した手段」は,州政府とクリントン政権の改革を補強するものである。「個人の責任」は,医療保険に加入していない人々に対して医療保険の加入を求めている。また「雇用主の責任」は,医療保険を提供していない雇用主に対して医療保険の提供を求めている。しかし,加入者(とくに低所得の加入者)を増加させるには,保険料が負担可能でなければならない。「保険料税額控除」は,所得が比較的低い人々に対して保険料税額控除を行い,それによって保険料負担を軽減している。また「医療費自己負担の制限」は,被保険者(とくに低所得者)に対して医療費自己負担の軽減を行っている。州政府が設立・運営に大きくかかわる「医療保険取引所」は,多くの点において州政府に裁量や選択を認めている。
オバマケアは,第1に,「州政府とクリントン政権の改革を受け継ぐ手段」に「新たに導入した手段」を追加することによって,医療保険の入手可能性と保険料負担可能性をいっそう改善しようとするものである。第2に,改革の新規性も含め,医療保険改革(医療保険規制)における州政府の主導性という枠組みを損なうものとはなっていないということができる。
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