痛風と核酸代謝
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原著 4
ピタバスタチン単回投与による尿酸代謝に及ぼす急性効果
角田 弘一古家 大祐竹越 襄
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2011 年 35 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の急性および早期効果は,すでに循環器領域で血管内皮機能改善作用として臨床報告され脚光を浴びている.また,スタチンの血清尿酸値低下作用を有する報告は今まだ少ないが,著者らはピタバスタチンで同作用機序として腎機能の改善が関与することを報告した.
そこで今回,未治療男性12名にピタバスタチン2mgを単回投与し,投与前,2時間,4時間,および6時間後の急性期における尿酸,腎,酸化ストレスならびに脂質代謝に及ぼす影響を,うち7名の対照群と比較し,以下の結果を得た.
尿酸代謝を検討すると,血清尿酸値はピタバスタチン投与2時間および4時間後に有意に低下し,対照群との比較では2時間後に有意な群間差を認めた.尿酸クリアランス(CUA)並びに補正尿中尿酸排泄量(mg/kg/h)は投与2時間後に有意な上昇を示し群間差も認めた.腎機能の面から検討すると,血清クレアチニンは投与2時間および4時間後有意に低下したが,両群間で差異はなく,クレアチニンクリアランス(Ccr)は投与2時間および4時間後に有意な増加を示し,2時間後に有意な群間差も認めた.さらに,酸化ストレス指標の尿中8-OHdGおよび尿イソプロスタン生成速度は投与後有意に減少し,尿中8-OHdGは有意な群間差を示した.脂質代謝では,血清中性脂肪が両群で有意あるいは低下傾向を示した以外,その他は有意な変動を示さなかった.
以上より,血清尿酸値の低下は一過性ではあるが,ピタバスタチン投与2時間後という極めて早期の時点から確認でき,この現象はピタバスタチン投与による尿酸排泄マーカーのCUAの上昇,尿酸排泄量の増加,さらに腎糸球体濾過量を示すCcrの増加と一致した.同時に,酸化ストレスマーカーである尿中8-OHdGおよび尿イソプロスタン生成速度も有意に減少した.これらの急性効果は,対照群では認められていないことから,水負荷によるhyperfiltrationによるものではなく,血清コレステロール代謝に及ぼす影響とは独立したピタバスタチンの多面的薬理作用によると推察される.

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© 2011 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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