抄録
I型Na+リン酸トランスポーター(NPT)ファミリーSLC17に属するヒト遺伝子SLC17A3は,その輸送基質が不明のオーファントランスポーターであった.2008年,Deghanらは全ゲノム関連解析の結果,SLC17A3はSLC2A9,ABCG2とともに,血中尿酸値に影響を与える遺伝子の一つであることを報告した.最近我々は,SLC17A3遺伝子産物のNPT4は腎臓近位尿細管管腔側膜に発現し,電位依存性にパラアミノ馬尿酸(PAH)や尿酸などの有機酸の排出を担う多選択性トランスポーターである事を見出し報告した.今回NPT4の更なる輸送特性の解析を行った.常法に従いNPT4 cRNAをin vitro transcription法により作成し,アフリカツメガエル卵毋細胞にmicroinjection法により注入して,2-3日経過後NPT4による尿酸の細胞内取込みを測定した.RI標識PAH及び尿酸の卵母細胞からの排出実験には,cRNA発現卵毋細胞へのmicroinjection法による基質の直接的注入を行い,一定時間経過後の細胞内外のPAH及び尿酸量を測定し,排泄率を計算した.NPT4によるPAH及び尿酸取込みは,ともに細胞内のpH上昇/下降により増加し,またそれらの排出はともに細胞外pH上昇の影響を受けない点で共通していた.NPT4によるPAH及び尿酸取込みは,細胞外溶液のイオン組成をNa+をK+に置換することにより増加するが,これは細胞外K+濃度依存性で,ともに50mMを越える条件下で増加することが見出された.以上の結果から,NPT4の尿酸輸送特性は,そのPAH輸送特性とほぼ一致すると考えられた.このことはNPT4による尿酸輸送において,有機酸輸送時と同じ基質結合部位を利用している事,また同部位を介して薬物と尿酸が相互作用(薬物誘発性高尿酸血症)する可能性を示唆する.