薬剤有害事象は多大な労力と費用をかけ,臨床治験や市販後調査により把握されるが,電子カルテデータを利用すれば安価に短時間で薬剤有害事象を捉えることができる可能性がある.我々は,電子カルテの処方オーダデータを重複投与や内服忘れによる残薬を考慮して結合し,服薬開始日と終了日を明確とする服薬歴を作成するシステムを構築した.本研究では鳥取大学医学部附属病院でアロプリノール,フェブキソスタット,ベンズブロマロンの投与患者から悪性腫瘍の疾患がある患者を除外した1,777症例を対象に,服薬期間と血清ALT値の経時変化を比較し,薬剤性肝障害の発生頻度を求めた.「服薬開始後にALT値が上昇し」,「服薬期間は肝機能異常が持続し」,「服薬終了後にALT値が低下する」を満たす場合を薬剤性肝障害と判定した.薬剤性肝障害の発現頻度は,アロプリノール1,224症例中18例(1.5%),フェブキソスタット266症例中5例(1.9%),ベンズブロマロン287 症例中3 例(1.0%)であった.Fisherの直接法検定では,3群間で有意差は認められなかった.本法により異なる薬剤における有 害事象の発生率をシステムで自動的に捉えることが可能となり,薬剤疫学研究に有効な手法となると考えられた.