痛風と核酸代謝
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総説
抗がん性核酸アナログと白血病の薬物療法
山内 高弘
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2017 年 41 巻 2 号 p. 161-169

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抄録

 白血病は造血器悪性腫瘍で,急性骨髄性白血病,急性リンパ性白血病,慢性骨髄性白血病,慢性リンパ性白血病に4大別される.骨髄異形成症候群は前白血病状態である.白血病や骨髄異形成症候群では薬物療法が治療の主体で,抗がん性核酸アナログは白血病治療の発展に最も大きく寄与した薬剤である.特にシタラビン(ara-C)は今もなお急性骨髄性白血病治療の最重要の薬剤である.我々の教室も含めて,ara-Cの作用増強のために薬理学的特性に基づいて様々な併用療法などの工夫がなされてきた.Ara-Cにおいては,血中濃度ではなく薬物の作用点レベル(がん細胞質内・核DNA内)の薬物動態が治療効果に直結する.Ara-C3リン酸が抗腫瘍効果のsurrogateであるが,フルダラビンを併用することでara-C3リン酸生成は増強される.しかしAra-C耐性機序によりこの薬理学的併用成功の可否が決定される.また,がん細胞内ara-C活性化酵素/分解酵素比がara-C感受性予測因子となりうる.Ara-Cの殺細胞効果は細胞回転依存性である.細胞分裂をM期で停止させること,DNA修復を利用することで,殺細胞効果を増大させることができる.さらに,Bcl-2阻害薬を用いることでアポトーシス誘導増強によりara-Cの作用を増強することができる.アザシチジン(5-azacytidine)/ デシタビン(5-aza2-deoxycytidine, decitabine)はシタラビン誘導体であるがメチル化阻害薬という側面を持つ.いずれも白血病細胞内でリン酸化され,核DNA内に転入される.Ara-CがDNA合成を阻害しアポトーシスを誘導するのに対して,5-azacytidine/decitabineはDNA内でメチル基転移酵素を阻害し脱メチル化によりエピジェネティック異常を修復する.デシタビンにより処理された培養白血病細胞は分化・成熟し,Wilms' Tumor 1発現が低下し,増殖が抑制され,アポトーシス死を生じる.このように核酸アナログの代表ara-Cは,Backborn regimenとして,白血病発症・進展に関わる遺伝子異常に基づく分子病態を標的とする薬剤との併用が期待される.5-azacytidine / decitabineは白血病/骨髄異形成症候群の発症・進展に強く関わるエピジェネティック異常を標的とする新たな併用戦略の要として期待される.

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© 2017 一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
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