抄録
痛風発作は滑膜下に形成された痛風結節から関節内に脱落した尿酸1ナトリウム(MSU)結晶を好中球が貧食することで発症するが,その自然消退の機序は完全に解明されたとはいえない.著者はMSU結晶をinvitroで血漿, 血清, または関節液とインキュベートすると低密度リポタンパク質(LDL)が排他的に結晶に吸着することを明らかにした.本研究では血清をLDL画分とLDL除去血清とに分画し,全血清またはこれらの血清画分とインキュベートしたMSU結晶刺激による好中球のルミノール依存性化学発光(CL)を測定するとともに,インキュベートしたMSU結晶をネガティブ染色して電子顕微鏡下に観察した.好中球CLは,前もってLDL画分や全血清とインキュベートしたMSU結晶では著明に抑制されたが,LDL除去血清とインキュベートしたMSU結晶では抑制されなかった. このことから,MSU結晶刺激による好中球CLを抑制する主要な血清タンパク質はLDLであると考えられた.電子顕微鏡下に観察すると,LDL画分とインキュベートしたMSU結晶の表面はLDL粒子で完全に被覆され,全血清とインキュベートしたMSU結晶の表面は半分程度が被覆されていた.以上の結果から次のような痛風関節炎の消退機序を提唱する. 急性炎症は毛細血管透過性を亢進させるため関節内に大量のLDLが流入しMSU結晶に吸着される.結晶表面の大半がLDLで被覆されると,好中球の結晶への接触が物理的に妨げられて貧食が阻害される結果,痛風関節炎が消退に向かう.