日本薬理学雑誌
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特集:化学療法誘発性末梢神経障害の発症機序と対策:最新の研究動向
HMGB1を標的とする化学療法誘発性末梢神経障害の発症予防
川畑 篤史坪田 真帆関口 富美子辻田 隆一
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2019 年 154 巻 5 号 p. 236-240

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抄録

化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)はがん患者のQOLを著しく損ない,治療の継続を困難にする可能性のある有害事象であるが,現在,CIPNを回避する有効な対策はほとんどない.そのためCIPNの発症メカニズムを解明し,臨床応用可能なCIPN発症抑制薬・治療薬を開発することは喫緊の課題である.我々は,CIPNの発症にdamage-associated molecular pattern(DAMP)タンパク質の1つであるhigh mobility group box 1(HMGB1)が関与することを明らかにしている.また,日本において播種性血管内凝固症候群(DIC)治療薬として承認されているthrombomodulin αが,抗がん薬投与に伴って細胞外に放出されるHMGB1をトロンビン依存的に分解することでCIPNの発症を阻止できることを報告している.このように,HMGB1あるいはその受容体を標的とする薬物を用いることで近い将来CIPNの発症を抑制できるようになることを期待したい.

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