痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
原著 1
まれな変異に重点を置いた尿酸値の遺伝率の研究
三澤 計治三島 英換長谷川 嵩矩大内 基司小島 要河合 洋介松尾 雅文安西 尚彦長﨑 正朗
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2021 年 45 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

痛風は,尿酸が原因で起こる関節炎であり,罹患者も多い.先行研究では血清尿酸値の遺伝率は30〜70%と推定されている.遺伝子ベース検定を用いた最近の研究では,まれな変異の有無がヒト集団中の血清尿酸値分散に大きく寄与していることが示唆されている.遺伝子ベース検定は,1つの遺伝子に含まれる複数の遺伝子変異の影響を1回の検定で考慮するものである.本論文では,数値計算を用い,遺伝子ベース検定のサンプルサイズと検出力の関係を解析した.仮想的なヒト集団を,まれな変異を持つ人々と持たない人々の二つの群に分けた.この二群間での尿酸値の平均値の差は,先行研究によるURAT1変異の有無によって生じる差と同じ値を使った.また,各個人の尿酸値は,その個人が属する各群の平均値を期待値とする正規分布に従うと仮定した.等分散性を仮定しないWelchのt検定を行い,検出力を計算した.今回の数値計算から,まれな変異は,一つのSNPだけを用いている場合,1万人から数万人ほどの大きさのサンプルが必要であることがわかった.複数のSNPをまとめた検定を行うことで,検出力が上がり,数百から数千人規模の研究でも検出できることが示された.この研究は,今まで主に研究対象となってきた「ありふれた疾患,ありふれた変異」に加え,遺伝子ベース検定による,「ありふれた疾患,まれな変異」の研究の可能性を示した.

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© 2021 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会
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