痛風と尿酸・核酸
Online ISSN : 2435-0095
総説 3
尿酸代謝と運動療法
上石 知溫阿江 竜介小佐見 光樹久留 一郎桑原 政成
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2025 年 49 巻 2 号 p. 131-136

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Abstract

高尿酸血症・痛風の治療において,生活習慣の改善,特に運動習慣は血清尿酸値のコントロールに重要である.高強度の無酸素運動はアデノシン三リン酸(ATP)の分解亢進と,乳酸の蓄積による尿酸排泄低下により,血清尿酸値を上昇させる.一方で,適度な有酸素運動,継続的な運動習慣は,肥満の予防やインスリン抵抗性の改善にも寄与し,長期的な血清尿酸値の低下につながると考えられている.我々は,JMDCの健診データベースを用いた研究を行い,男性では,運動習慣や日常運動があることと,血清尿酸値が低いことが関係することを示し,肥満者ほどその効果が大きい可能性を示した.また女性でも,特に肥満者において,運動習慣と血清尿酸値が低いことが関係する可能性を示した.運動指導においては,患者の背景,関節症状,合併症を考慮し,有酸素運動を中心に行うことが勧められる.高強度の運動を行う際には水分摂取を推奨し,痛風発作時や関節症状のある場合は,関節に負担のかからないような指導も重要である.高尿酸血症・痛風の患者に対して,定期的な血清尿酸値の確認と共に,個々の患者に適した運動指導を行うことが,コンプライアンス維持の観点からも大切である.

Translated Abstract

Lifestyle modifications, particularly exercise habits, play a crucial role in managing hyperuricemia and gout. High-intensity anaerobic exercise increases serum uric acid levels due to enhanced adenosine triphosphate (ATP) metabolism and decreased urinary uric acid excretion caused by lactate production. Conversely, consistent aerobic exercise habits contribute to weight management and improved insulin resistance, potentially leading to long-term reductions in serum uric acid levels. Our research utilizing the JMDC medical checkup database demonstrated an association between regular exercise or exercise habits and lower serum uric acid levels in men, with a potentially greater impact observed in obese individuals. A similar association between exercise habits and lower serum uric acid levels was noted in women, particularly those with obesity. Exercise guidance should consider individual patient backgrounds, joint symptoms, and comorbidities, with a primary recommendation for aerobic exercise. Adequate hydration is advised if high-intensity exercise is needed. For patients experiencing gout attacks or joint symptoms, exercise guidance that minimizes joint stress is recommended. Regular monitoring of serum uric acid levels and providing tailored exercise recommendations are essential for maintaining patient adherence in the management of hyperuricemia and gout.

はじめに

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)」において,高尿酸血症・痛風の治療では,関連する生活習慣を改善することが最も大切とされている1).日々の食事や飲料に加え,日常生活における運動習慣が血清尿酸値に与える影響も小さくはない.運動の種類や内容によって,尿酸代謝に及ぼす影響は多様であることが知られている.臨床においては,個々の患者が抱える背景の違いにより画一的な運動指導が難しい場面もあり,各患者に適したオーダーメイドの指導が必要となる場面もある.本稿ではまず,運動が尿酸代謝に与える影響について,その基礎的な生理機序を概説する.続いて,運動の内容や習慣が血清尿酸値に与える影響について,近年の研究成果を交えながら説明する.また,実際に患者へ運動指導を行う際の注意点についても述べる.

運動と尿酸代謝の生理

運動は生体内のエネルギー代謝を活性化させる刺激であり,その過程においてアデノシン三リン酸(adenosine triphosphate: ATP)がエネルギー源として用いられる.図1に示すとおり,ATPは骨格筋内でATP→アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate: ADP)→アデノシン一リン酸(adenosine monophosphate: AMP)→イノシン一リン酸(inosine monophosphate: IMP)→ヒポキサンチン(hypoxanthine: HX)と代謝される.HXは肝臓でキサンチン(xanthine: X)を経て最終的に尿酸に代謝され,血中に放出される.血中に放出された尿酸は,尿中あるいは腸管に排泄される.これらの産生と排泄のバランスが保たれることにより,血清尿酸値は一定に保たれている2).高強度の運動により,骨格筋でのATPの分解が進み尿酸産生量が増加すると,このバランスが崩れ高尿酸血症を生じる.

図1 運動時の尿酸産生と尿酸排泄

Figure 1: Uric Acid Production and Excretion during Exercise

運動内容による血清尿酸値への影響

運動の内容によって,血清尿酸値への影響は異なる.その中でも,運動強度が嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold: AT)を上回る無酸素運動と,ATを下回る有酸素運動では血清尿酸値へ異なる影響を与える.

無酸素運動を含む高強度の運動においては,主に収縮速度の速い速筋(白筋)が用いられるため,前述のATP分解がより活性化されると考えられている.さらに,筋活動や嫌気性代謝によって,プリンヌクレオチドの異化亢進に加えて乳酸の産生も亢進する.乳酸は尿酸の排泄と競合し,尿酸の排泄を抑制する作用を持つ.結果として,無酸素運動を頻回に行うと,筋原性の尿酸の産生が促進されることに加え,乳酸の蓄積による尿酸排泄低下によって,血清尿酸値が上昇すると考えられている3)

一方で,有酸素運動(ウォーキングやジョギング,サイクリング,水泳など)を含む強度の高くない運動では,遅筋(赤筋)が主に用いられるため,尿酸代謝に及ぼす影響は小さいと考えられる.こうした運動では,尿酸の中間代謝産物であるHXの上昇を引き起こさないという報告がある4).また内臓脂肪の蓄積がインスリン抵抗性の増大を引き起こし5),尿中への尿酸排泄低下6)や尿酸産生過剰7)による高尿酸血症を招くことが知られており,有酸素運動による肥満解消効果も重要である8,9).さらに有酸素運動を継続的に行う場合は,有酸素運動のエネルギー源として乳酸が再利用される8)ため,前述の尿酸排泄への競合作用が低下すると考えられる.

このような観点から,運動内容としては血清尿酸値の上昇を抑える有酸素運動が推奨される8)

運動習慣による血清尿酸値への影響

単回または短期間の運動が血清尿酸値に与える影響は数多く報告されているが,運動を尿酸コントロールの手段として有効とするためには,運動の強度だけでなく,運動の継続も重要となる.健康日本21(第三次)においても,運動習慣を「1回30分以上の運動を週2回以上実施し,1年以上継続すること」と定義し,運動習慣者の増加を目標としている9).こうした運動習慣が,尿酸代謝に与える長期的影響について考察する.

運動習慣と血清尿酸値との関係を評価した研究は,いくつか報告されている.ここで示す2つの研究では,運動習慣(身体活動レベル)を自記式アンケートである国際標準化身体活動質問票(international physical activity questionnaire: IPAQ)10)を用いて「低」,「中」,「高」の3カテゴリーに分類している.IPAQでは運動の頻度と強度によって身体活動レベルを分類しており,「中」では最低週3日以上の運動頻度,「高」では最低週3日以上の運動頻度と1500 METs・分/週以上の総身体活動量が求められる.Dongらは,中国の農村部の住民を対象とした横断研究を行い,IPAQを用いた身体活動レベルと高尿酸血症との関係を報告した11).男女ともに,身体活動レベルがより高い人は,高尿酸血症の有病率が低いことと関連していた.多変量ロジスティック回帰分析では,男女ともに身体レベル「高」が,高尿酸血症の有病率が低いことに対する独立した因子と示された.またParkらは,韓国の健康診断を受診した住民を対象とした横断研究を行い,IPAQを用いた身体活動レベルと高尿酸血症との関係を報告した12).身体活動レベル「中」「高」の住民は,「低」の住民に比べ高尿酸血症の有病率が低いことと関連していた.運動習慣が,インスリン抵抗性の改善を通じて,血清尿酸値が低いことと関連していたという報告もあり13),これらのメカニズムが関与している可能性も考えられる.

我々は,本邦における大規模健診データベースを用いて行った検討で,日常生活における運動習慣と高尿酸血症の有病率との関係を報告した14).本研究ではJMDCデータベースを用いて,問診項目で「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上,1年以上実施」を「運動習慣あり」,「日常生活において,歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施」を「日常運動あり」と定義し,各運動の有無における血清尿酸値を男女別に解析した.さらに各項目について,年齢50歳以上・未満,Body mass index(本研究においては,やせ:<18.5 kg/m2,正常:18.5≤ <25 kg/m2,肥満:25 kg/m2≤と定義した)で感度解析を追加した.その結果,男性で運動習慣や日常運動があることが,血清尿酸値が低いことと関係することが示され,肥満者ほどその効果が大きい可能性が示唆された.また女性では,特に肥満者において,運動習慣と血清尿酸値が低いことが関係する可能性が示された.

これらの研究結果より,尿酸の観点からも特に肥満者において運動を継続することの意義が示唆される.運動習慣は,BMIを低下させることを通じて痛風のリスクを低下させるという報告もあり15),これらが患者への教育や運動習慣の動機づけの一助になることが期待される.ほかにも運動習慣だけでなく,座位時間の長さが,痛風発作や高尿酸血症と関連するという報告もある12,16).日常生活において,運動習慣を勧めることに加えて,長時間の座位を避け,適度な運動を定期的に実施することも,生活・運動指導において重要であろう.

運動処方においての注意点

血清尿酸値の高い患者に対する運動指導においては,患者個々の背景(年齢,既往,運動習慣,関節症状など)を十分に考慮した運動処方を行うことが求められる.「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)」では,有酸素運動(例:ウォーキングや軽度のジョギング,サイクリング,水泳など)を主体とした運動療法が推奨されている1).しかし,痛風結節を有する患者や,高度の肥満で関節への負荷が大きい患者,変形性関節症などの疾患を有する患者では,関節に負荷のかかる運動の継続が困難な場合がある.このような場合には,ATを上回らない強度でのレジスタンス運動(等尺性運動,筋力トレーニングなど)が選択肢となる17).レジスタンス運動を行う際の注意点として,高強度の運動は,筋活動によりATP分解が進み一時的に血清尿酸値の上昇を来しやすいため,十分な水分を摂取し,脱水を予防する必要がある18).さらに痛風発作の直後や関節症状が残存している患者には,強度を調整して行うなどの工夫が必要である.

多くの場合,血清尿酸値の変動は体感できるものではなく,運動の効果は患者にとって自覚しづらい.そのため,患者のコンプライアンスを維持するためには,定期的な血清尿酸値の結果を患者に伝えるとともに,運動継続の必要性について,食事・飲料などの日常生活指導と共に繰り返し説明することが重要である.

運動療法を勧める際には,低尿酸血症の患者にも注意が必要である.低尿酸血症は一般的に血清尿酸値が2.0mg/dL以下を基準としているが19),そのほとんどが腎性低尿酸血症(renal hypouricemia: RHUC)によるものだとされている20).RHUC患者が高強度の運動(特に無酸素運動)を行うと,腎動脈の攣縮により運動後急性腎障害(exercise-induced acute kidney injury: EIAKI)を認める例が報告されている19).EIAKIの多くは,一過性の腎障害で改善を認めることが多いとされているものの,重症化して一時的な透析が必要となった症例も報告されている21).RHUC患者のうち,EIAKIを合併する頻度は全国アンケート調査で6.1%22),大学病院受診患者に対する検討で21.1%23)という報告がある21).報告によってばらつきはあるものの,比較的頻度の高い合併症であると考えられ,RHUC患者に対する予防法の指導は非常に重要である.予防策としては,運動前後の十分な水分補給,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug: NSAIDs)の服用回避,NSAIDs服用時の激しい運動の制限などが報告されている24)

おわりに

運動は,痛風・高尿酸血症の治療における重要な非薬物療法の一つであるが,運動の内容や強度によって,尿酸への影響が変化するという複雑な側面も持ち合わせている.尿酸代謝のメカニズムに加え,運動の短期的・長期的影響を理解したうえで,個々の患者に最適な運動介入を行うことが必要と考える.

謝  辞

本研究は,JSPS科研費(JP20K17168, JP23K07493),痛風・尿酸財団研究助成金,日本痛風・尿酸核酸学会若手研究助成を活用して実施した.

COI

久留一郎:持田製薬株式会社および株式会社富士薬品(講演料,原稿料,奨学寄付),他の著者は本論文発表内容に関連して特に申告なし.

References
 
© 一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会
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