2025 年 49 巻 2 号 p. 137-144
Recent studies have highlighted that xanthine oxidoreductase (XOR) inhibitors, widely used as therapeutic agents for gout, have effects beyond urate-lowering, notably impacting cellular energy metabolism. Beneficial effects on the brain and cardiovascular system have been reported following administration of allopurinol or febuxostat. Conversely, clinical observations suggest that discontinuation of XOR inhibitors may be associated with an increased risk of cardiovascular events. These findings indicate that XOR inhibition not only suppresses uric acid production but also markedly influences purine metabolism, particularly the salvage pathway-mediated ATP production mechanism. This review outlines the relevance of impaired energy metabolism in the pathophysiology of neurodegenerative diseases, and significance of the purine salvage pathway in the human brain. Furthermore, we discuss combination strategies, focusing on XOR inhibitors, which aim to enhance intracellular ATP levels.
尿酸降下薬として広く使用されているキサンチン酸化還元酵素(XOR)阻害薬に関して,従来の尿酸低下作用に加えて,細胞内エネルギー代謝への影響が注目されている.これまで,XOR阻害薬の投与により,脳や腎臓,心血管などで有益な作用が報告されている1,2,3,4).一方で,投与中止後に心血管イベントの悪化を招く可能性が臨床的に示唆されている5).近年の研究から,XORの阻害が単に尿酸産生を抑制するだけでなく,プリンサルベージ経路を介したATP産生機構に深く関与している可能性が浮かび上がってきた.この知見は,痛風だけでなく,神経変性疾患を含む様々な疾患治療に役立つことが期待される.本総説では,神経変性疾患の病態におけるエネルギー代謝障害と,ヒト脳でのプリンサルベージ経路の意義について概説する.また,XOR阻害薬を中心としたATP増強のための併用戦略についても論じる.
アルツハイマー病,パーキンソン病,および筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経変性疾患の研究では,長年に渡り,アミロイド,タウ,およびα-シヌクレインの蓄積を病因とする仮説が主流であったが,近年では,エネルギー機能不全が関与している可能性が示唆されている6,7,8,9,10).アデノシン三リン酸(ATP)は細胞のエネルギー通貨として,タンパク質の合成や分解,筋収縮,イオン輸送,細胞内シグナル伝達など,さまざまな生命活動に利用される.ATPが枯渇すると,これらの機能が維持できなくなることで,最終的には細胞死を引き起こす.ATPレベルの低下は,ATP依存性ユビキチン-プロテアソーム経路を介した異常タンパク質の分解を妨げ,結果としてそれらが細胞内に蓄積しやすくなる可能性がある.実際,タンパク質1分子を分解する時には,その折りたたみ状態にかかわらず,少なくとも300個のATP分子が加水分解されることが報告されている11).
ATPは主に解糖系やミトコンドリアでの酸化的リン酸化で合成されるが,瞬間的なエネルギー需要は,クレアチンリン酸シャトルやアデニル酸キナーゼ(2ADP→ATP+AMP)によって補われる.AMPは低エネルギー状態のシグナルとして機能し,AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化するとともに,酵素のアロステリック制御を介してエネルギー代謝調節に寄与する.細胞内ではATP濃度が最も高く,ADP,AMPの順に低くなっていくため,ATPがわずかに減少するだけでも,ADPやAMPの濃度は大幅に増加する.細胞内の総アデニンヌクレオチド(ATP+ADP+AMP)は短時間では大きく変化しないが,激しい運動や持続的な強いストレス下では細胞のエネルギー状態の指標であるエネルギーチャージ(EC =([ATP]+0.5[ADP])/([ATP]+[ADP]+[AMP]))が低下する12).このとき,AMPデアミナーゼはAMPをIMPに分解することで,ECを維持する方向に働く.IMPはイノシンに分解された後,ヒポキサンチンとなり,XORによってヒポキサンチンからキサンチン,キサンチンから尿酸へと代謝され,血中に放出される.したがって,血中ヒポキサンチンや尿酸値の上昇は,過度のATP消費の指標となる.
ATPやGTPなどのプリンヌクレオチドは,いくつかのアミノ酸やギ酸を原料として新規に合成される(de novo経路)ほか,以前に合成されたプリンヌクレオチドが分解されて生じたプリン塩基が再利用される(プリンサルベージ経路)ことによって供給される(図1).de novo経路では多量のATPが必要とされるが,プリンサルベージ経路ではATP消費が少ないため,エネルギー効率が高く,細胞の迅速なATP再構築に寄与している.プリンサルベージ経路の主要な酵素はヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)であり,ヒポキサンチンまたはグアニンとPRPPを反応させ,IMPまたはGMPを生成する.HPRTはその遺伝子が多くの組織や細胞で一定量発現しているハウスキーピング遺伝子であるが,特に神経細胞のようなエネルギー需要の大きい細胞で活性が高い.また,赤血球はde novo経路を欠き,プリンサルベージ経路に依存している.神経細胞と赤血球はXORが発現しておらず,これによりヒポキサンチンが蓄積しやすくなり,プリンサルベージ経路が活性化される代謝特性を有している.

PRPP; phosphoribosyl pyrophosphate, PPAT; amidophosphoribosyltransferase, HPRT; hypoxanthine-guanine phosphoribosyltransferase, APRT; adenine phosphoribosyltransferase, XOR; xanthine oxidoreductase
アルツハイマー病に似た病理学的所見は,de novo経路とサルベージ経路の不均衡がある疾患でも観察される.HPRT完全欠損症であるLesch-Nyhan症候群(LNS)は,高尿酸血症と自傷行為を含む重度の神経症状を引き起こす.プリンサルベージ経路の欠如は代償的にde novo経路を亢進させプリンヌクレオチドの不足を補おうとする.LNSの病理学的解剖所見は,顕著な神経細胞死による脳萎縮を特徴とし,軽度のHPRT欠損症で比較的高齢まで生存した患者では13),リン酸化タウタンパク質の存在が確認されている.21番染色体のトリソミーが原因であるDown症候群患者は,アルツハイマー病を早期に発症しやすいことで知られている.この21番染色体には,de novo経路に関連する3つの遺伝子(GARS, AIRS, GART)がマッピングされており,トリソミーによってこれらの遺伝子発現が増加することで,プリンヌクレオチド合成が過剰となる.その結果,高尿酸血症,血漿アデノシンレベルの上昇,アデノシンデアミナーゼ活性の亢進などを引き起こす14,15).
この知見に基づき,虚血や神経変性疾患などのエネルギー需要が増大する病態においては,ATPを増強する治療戦略が有効である可能性が示唆される.この考えは,保存血液に関する研究によって裏付けられ16,17),保存血液にアデノシンやイノシンを添加することで赤血球内のATPレベルが上昇し,赤血球の生存率が改善されることが報告されている.イノシンは赤血球中でプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)によりヒポキサンチンとリボース-1-リン酸(R1P)に分解され,R1Pはリボース-5-リン酸(R5P)に変換されてペントースリン酸経路に供給される.さらに,R5PはATPと反応してPRPPとなり,これがプリンサルベージ経路を介してATPの再合成に寄与すると考えられている17).
XORは通常,組織内ではNAD+を電子受容体とする脱水素酵素型(XDH)として存在するが,哺乳類では酸素を電子受容体とする酸化酵素型(XO)に変換されることでスーパーオキシドを産生する18,19).1968年にMcCordとFridovichによって,スーパーオキシドを消去する酵素であるSOD1が同定され20),この発見を契機に,スーパーオキシドが炎症性疾患,虚血再灌流による組織障害,酸化ストレス関連疾患など,様々な病態に関与することが示唆され,関連研究が活発化した21).虚血再灌流障害の機序としては,虚血時にATP分解により組織内に蓄積したヒポキサンチンが,再灌流時にXOによって酸化される際に,酸素を基質として多量のスーパーオキシドを生成するという仮説が立てられた.XOが主要なスーパーオキシド供給源と考えられたことから,これを阻害することによって組織損傷の軽減が期待されてきた.実際に,その有効性を支持する観察結果も報告されている22,23).しかし,XOが組織障害にどのように関与しているのか,その正確なメカニズムは十分に解明されていない.ウサギ脳虚血モデルにおいてヒポキサンチンを投与し,脳損傷が悪化するかを検討した研究では,むしろ損傷の改善が認められたと報告されている24).ヒポキサンチンは血液脳関門を通過することが確認されており25),注入により大脳皮質におけるヒポキサンチン濃度は上昇したが,再灌流4時間後の時点では濃度が低下していた.このことから,ヒポキサンチンの代謝または排泄が促進された可能性が示唆される.
ALSは,脊髄の運動ニューロンが変性,脱落する神経変性疾患であり,遺伝的要因によって発症する家族性ALSの約20%にはSOD1遺伝子変異が認められている26).その病因はSOD1変異によるROSの除去能低下が関与するとされている.そこで,加藤らによって変異型SOD1を過剰発現するALSモデルマウス(G1H-G93Aマウス)を用いて,XOR阻害薬の効果が検討された1).発症前からフェブキソスタット,トピロキソスタットを経口投与したところ,ALSの発症が遅延し,症状進行が抑制され,寿命が延長した.これらの効果は,脳内での変性タンパク質の凝集や沈着を抑制し,ニューロンの脱落を防ぐことによって得られたが,アロプリノールでは同様の効果は認められなかった.すべての阻害薬投与群において血中尿酸値の低下とヒポキサンチン値の上昇が確認された.作用機序としてはROS産生の抑制も想定されたものの,ALSモデルマウスでは野生型および変異型SOD1のいずれも活性を保持していることから,これらの効果をROS抑制のみで説明することは難しく,他の機序が関与している可能性が示唆された.
さらに,スーパーオキシド過剰産生がマウス生体へどのような影響を及ぼすかを検討するため,草野らによってXO固定型変異体酵素を導入した遺伝子改変マウスが作製され,解析が行われた27).その結果,野生型マウスと比較して,表現型や成長に異常は見られず,寿命に関しても顕著な差は認められなかった.
ALSモデルマウスの結果は重要な示唆を与えている.病態遅延効果を示したフェブキソスタットおよびトピロキソスタットは,XORに特異的に結合する構造に基づく阻害メカニズムを有しているのに対し,効果が認められなかったアロプリノールはプリン類似体であり,他のプリン代謝経路にも作用する.特にアロプリノールはHPRTの基質となり,プリンサルベージ経路を阻害する可能性が指摘されている.これらの知見から,XOR阻害薬が症状の進行遅延に寄与したメカニズムとして,ヒポキサンチンが細胞内に取り込まれ,プリンサルベージ経路を介してATP再合成に利用されることで,エネルギー効率が改善されたと考えられる.得られたエネルギーは異常タンパク質をユビキチン-プロテアソーム系やオートファジーによって分解し,凝集形成および沈着の抑制に寄与した可能性が示唆される.これらの成果により,西野らは,アルツハイマー病などの認知症に関する特許(PCT/JP2016/055226およびPCT/JP2017/006007)を取得している.
動物モデルに基づく研究をヒトに適用する際には,種差を十分に考慮する必要がある.プリン分解経路の最終産物はヒトと一般的な動物モデルでは異なり,ヒトは尿酸であるのに対し,多くの哺乳類ではさらにアラントインまで分解される(図1).実際,XOR阻害薬はマウスやラットではヒポキサンチンやキサンチンの蓄積により腎結石形成を引き起こし,致死的となるが28),ヒトではこのような問題は通常生じない.また,マウスおよびラットにおけるHPRT活性はヒトの数十分の一と低く,LNSモデルマウスが作製されたものの,ヒトに特徴的な自傷行為などの神経症状は示さない29).一方で,ウサギはヒトと同程度の高いHPRT活性を有しており,このような代謝特性を持つ種では,プリンサルベージ経路がより効果的に機能すると考えられる.これらの知見を踏まえ,ヒト由来の試料を用いた実験が望ましいと考えられた.そこで我々は,ヒトの脳組織とiPS細胞を用いてプリンサルベージ経路の影響を検討した.ヒトの脳組織ではXORが発現しておらず,プリン代謝の最終産物として尿酸ではなくヒポキサンチンの顕著な蓄積が確認された3).また,HPRTの発現量が高かったことから,プリンサルベージ経路が活性化していることが示唆された.さらに,ヒトiPS細胞から誘導した神経細胞を用いて安定同位体分析を行ったところ,プリンサルベージ経路はde novo経路に比べ,ATP合成により効果的であることが示された.したがって,ヒトの脳においてはエネルギー効率を高めるために,プリンサルベージ経路が重要な意味を持つことが明らかとなった.
脳内にXORが存在しないことから,XOR阻害剤は脳以外の場所で作用すると考えられる.XOR阻害剤の標的臓器は肝臓であり,ヒポキサンチンは赤血球に取り込まれ全身に輸送される.ATP増強効果は心臓,腎臓,骨格筋など幅広い臓器に及ぶと期待される.XOR阻害薬の効果を最大化するには,最適な投与法と用量設定が重要であり,特にヒポキサンチンからキサンチンへの反応を強力に阻害する薬剤ほど高い効果が期待される30).アロプリノールの場合,より頻繁かつ高用量で使用することで,その有効性が高まる可能性が示唆されている.一方で,これらの結果は,XOR阻害薬の投与中止によってATP増強作用が失われた際に,リバウンド現象として離脱症状が生じる可能性があることを示唆している.より強力なXOR阻害薬ほど中断時に大幅な代謝変動を引き起こす可能性が高く,慎重な管理が不可欠である5,31).離脱症候群の主な原因は,XOR阻害薬による代謝支援機構の喪失にあり,漸減投与であっても安全性が十分に保証されるとは限らないため,エネルギー代謝変動による影響を十分に考慮する必要がある.
XOR阻害剤の使用により,有益な効果が得られることが示されているが,虚弱高齢者,神経変性疾患患者では血中尿酸値が低く,ATPレベルも低いことが示唆される.そのため,生体内でのATP合成が十分でない状況では,単にプリン体の喪失を防ぐだけでは効果が限定的となる可能性がある.したがって,体内のアデニンヌクレオチドプールを可能な限り飽和状態に維持することが,治療戦略として重要と考えられる.XOR阻害薬に加えて,プリンサルベージ経路の代謝速度を制御する基質を食事や薬剤,栄養補助食品などから摂取することで,効果をさらに高めることができる.赤血球に対する有効性がよく知られているイノシンや,うま味成分であるIMPは,いずれもヒポキサンチンの供給源となる.しかし,ヒトiPS由来神経細胞を用いたメタボローム解析の結果から,ヒポキサンチンの供給のみではPRPPが枯渇してしまい,ATPの増強効果は限定的であることが示された.そこで,PRPPの前駆物質を同時に投与したところ,いくつかのペントース(D-リブロース,D-キシロース,D-キシルロース,L-キシルロース),キシリトールおよびフルクトースがヒポキサンチンの細胞内への取り込みを促進し,ATPレベルをさらに上昇させることが明らかとなった3).キシリトールとフルクトースは甘味料や輸液製剤に含まれており,尿酸値を増加させることが知られている32).その機序は主に,ATP消費によるプリン分解亢進,およびPRPPの産生増大によるde novo経路の亢進によるものである.キシリトールは細胞内に取り込まれ,D-またはL-キシルロースに変換される.D-キシルロースはリン酸化されてD-キシルロース-5-リン酸となり,さらにリブロース-5-リン酸を経てR5Pに変換される.一方,フルクトースはヘキソキナーゼまたはフルクトキナーゼによりリン酸化され,フルクトース-6-リン酸またはフルクトース-1-リン酸に変換され,解糖系に組み込まれる.また,フルクトース-6-リン酸を利用してペントースリン酸経路の非酸化的経路を逆方向に進めることで,R5Pを生成する.キシリトールとフルクトースはマウス肝臓のPRPP含量を上昇させ,その能力はキシリトールの方が高いことが示されている32).それぞれの糖がPRPPに変換される過程において,ATP消費量が最も多いのはフルクトースであると考えられるが,それぞれの消費エネルギーやATP増強効果の相違点については,今後さらなる検討が必要である.
ヒト脳においては,プリンサルベージ経路がエネルギー代謝の維持において重要な役割を担っている.この経路を強化することで,神経変性疾患におけるエネルギー代謝障害の改善が期待される.尿酸降下薬は長期使用実績があり,また,プリン体やペントースは食品由来の成分でもあるため,安全性の面から比較的導入しやすい.さらに,現在の神経変性疾患治療薬とは作用機序が異なるため,併用療法の可能性も期待される.
本研究の一部は,一般社団法人日本痛風・尿酸核酸学会の若手研究助成および公益財団法人痛風・尿酸財団からの助成を受けて実施されました.西野武士先生,市田公美先生,永田宏次先生,岡本研先生には,多大なるご指導と貴重なご助言をいただき,深く感謝申し上げます.また,実験および技術支援をいただいた藤原めぐみ先生にも心より御礼申し上げます.
開示すべきCOI関係にある企業などはありません.