日本草地学会誌
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牧草の再生に関する生理・生態学的研究 : 第17報数種イネ科牧草の生育段階別再生量と株・根の化学成分および分けつとの関係
名田 陽一江原 薫
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1970 年 16 巻 4 号 p. 254-262

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抄録

第16報で述べた8草種のイネ科牧草の生育段階別再生量の変化の機構を知るために,まず刈取り時の株・根の貯蔵炭水化物含量および株の窒素含有率を調査した。この結果,生育段階別再生量の推移は刈取り時の株の窒素含有率の推移とよく一致することがわかった。このことから再生量の多い生育段階とは,刈取り時に存在する分けつの中で窒素含有率の高い,即ち若い分けつの占める割合が大である生育段階であろうと考え,刈取り時の分けつの状態を調査した。結果は以下のとうりである。1)生育段階が進むにしたがって再生量が減少する草種(エンバク,イタリアンライグラス)では,節間伸長が一斉に起こり,また出穂期以後の分けつ発生がとまる。そのために刈取り時に存在する再生可能な分けつ数は生育段階が進むにしたがって減少し,その結果再生量も減少する。2)出穂期および登熟期に再生量が少なく,その前後で多い草種(チモシー,オーチャードグラス)では節間伸長は一斉におこり,また出穂期には分けつ発生が止まるが,出穂期をすぎると再び分けつ発生が盛んになる。その結果刈取り時に存在する再生可能な分けつ数は出穂期および登熟期に少なく,その前後では多く,これが再生量を規定している。3)ペレニアルライグラスおよびローズグラスの生育段階別再生量の推移はチモシーおよびオーチャードグラスの場合とはほぼ同じである。また節間伸長は一斉におこるが,分けつ発生は出穂期にも止まらず,各生育段階で盛んである。その結果刈取り時に存在する再生可能な分けつ数は出穂期および登熟期に少なく,その前後では多く,これが再生量を規定している。4)生育段階が進むに伴って再生量が増加する草種(バヒアグラス)では,節間伸長は斉一には起こらず,また分けつ発生は生育段階にかかわりなくおこる。この結果刈取り時に存在する再生可能な分けつ数は生育段階が進むに伴なって増加し,そのために再生量も増加する。5)生育中期に再生量が多く,その前後で少ない草種(ダリスグラス)では,節間伸長は斉一にはおこらず,また分けつ発生は生育後期には止まる。この結果刈取り時に存在する再生可能な分けつ数は生育の中期に多く,その前後では少なく,これが再生量を規定している。

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© 1970 著者
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